爽快なカタルシス『犯罪都市 THE ROUNDUP』、新たな家族の形を描く『パラレル・マザーズ』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、“マブリー”ことマ・ドンソクが主演とプロデュースを務めた人気アクションシリーズ最新作、ペドロ・アルモドバルがペネロペ・クルスを主演に迎え、シングルマザー2人の不思議な絆を描くヒューマンドラマ、同性愛が合法化した2年後のアイルランドを舞台に、ゲイの少年とレズビアンの少女のかけがえのない関係性を切り取る青春ドラマの、心奪われる3本。
殺気みなぎる血生臭さのみならずユーモアも満載…『犯罪都市 THE ROUNDUP』(公開中)
巨漢のコワモテなのに愛嬌たっぷり。そんな相反する魅力を兼ね備えた韓国の人気者マ・ドンソクが、怪物的なパワーを誇るタフガイ刑事をはまり役で演じたポリス・アクションの続編が登場!今回、主人公のマ・ソクト(ドンソク)率いる衿川署の捜査班が立ち向かうのは、東南アジアで誘拐殺人などの凶行を重ねてきた極悪人カン・ヘサン(ソン・ソック)。前半のベトナムから後半の韓国へと舞台を移しながら、両者の追いつ追われつの壮絶な攻防が描かれていく。
接近戦の肉弾ファイト、大勢の一般市民が行き交う市街地でのチェイスなど、ありとあらゆる怒濤の見せ場を盛り込んだ映像世界は、韓国映画らしい殺気みなぎる血生臭さのみならずユーモアも満載。もちろんプロデューサーを兼任したドンソクも、ここぞという修羅場で頼もしい暴れっぷりを披露する。そして規格外のモンスター刑事と冷酷非情な悪党が直接対決になだれ込むクライマックス、その果てに待ち受ける爽快なカタルシスに浸ってほしい。(映画ライター・高橋諭治)
女性たちの強さや華やぎが、未来を明るく照らすようでいい…『パラレル・マザーズ』(公開中)
『オール・アバウト・マイ・マザー』(00)、『ボルベール』(07)などのペドロ・アルモドバルが、ペネロペ・クルスとなんと7度目の再タッグ。同じ日に母となった2人のシングルマザーの数奇な運命と新たな家族の形と愛を描く。17歳のアナ(ミレナ・スミット)と写真家のジャニス(ペネロペ)は、産科で同室となり友人に。そして同じ日に出産、再会を約束して退院する。しかしほどなく恋人から「自分の子と思えない」と指摘されたジャニスは、DNA鑑定で取り違えに気付く。だが既に愛着が沸いたゆえか、誰にも言わずに事実を封印。しかし1年後、アナの娘が突然死症候群で亡くなったと知り……。
まさに“母、女性、愛”はアルモドバルの命題、かつ“子どもの取り違え”というモチーフも目新しくないが、“今度はこう来たか!”とジャニスの選択や言動から目が離せない。しかも予想外の展開に!さらに監督にとって重要なもう一つのテーマ、“スペイン内戦”を盛り込んだことで若干、流れが滞り失速するきらいはあるが、なによりこのテーマにして重くなるような暗さがなく、女性たちの愛と連帯と生命力のしなやかな強さや華やぎが、未来を明るく照らすようでいい。(映画ライター・折田千鶴子)
ラストの余韻は少し複雑だが心地よい…『恋人はアンバー』(公開中)
ゲイのエディ(フィン・オシェイ)と、レズビアンのアンバー(ローラ・ペティクルー)。1995年、アイルランドの保守的な町で、自身のセクシュアリティと向き合いつつ、受け入れることが難しい高校生2人が、とにかく平穏な日常を送りたい、それだけのために期間限定のカップルになると決意。エディはわりと優柔不断で、アンバーは自分がブレないしっかり者と、性格も正反対の彼らが、一緒にいる時間が長くなるにつれ、心を許しあう仲に…。そのプロセスに誰もがシンパシーを感じずにはいられない作りになっている。
ゲイやレズビアンの高校生が、どう自分と葛藤するのか。本作はそこを真摯に見つめつつ、主人公たちのネガティブな一面も照らしだし、さらにそれぞれの家族、クラスメイトらが抱える問題の絡め方も絶妙。一見、教訓めいた作品と思われがちだが、作品のノリはポップでキュートなので、青春ストーリーとしての輝きも満点。大切に思う人のために自分はなにができるのか。それに対して、相手はどう応えればいいのか。ラストの余韻は少し複雑だが心地よい。(映画ライター・斉藤博昭)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼