批評家が選ぶ、トニ・コレット出演作ランキング!唯一無二の個性派、“フレッシュ”な10選
もっとも高い評価となる97%フレッシュを獲得したのは、“6代目ジェームズ・ボンド”ことダニエル・クレイグが主演を務めたミステリー映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』。同作でコレットが演じたのは、殺害されるミステリー作家の亡き長男の妻ジョニ役で、かなり変わり者なインフルエンサーという役どころだ。
アカデミー賞脚本賞にノミネートされた同作は緻密に構成されたミステリー展開もさることながら、かなりクセの強い登場人物たちのアンサンブルが見どころの一つ。主演のクレイグやクリス・エヴァンスをはじめ、名優クリストファー・プラマーや話題作への出演が相次ぐアナ・デ・アルマス、「ハロウィン」シリーズのジェイミー・リー・カーティスに、『ブレット・トレイン』(22)のマイケル・シャノンとかなりの個性派ぞろいのなかで、負けず劣らずの存在感を放つコレット。やはり恐るべし。
フィルモグラフィを振り返ってみれば、キャリアの初期から映画ファンの多くが知る有名作に多数出演しているのがよくわかる。高評価を得ながらも、リストには惜しくも入らなかった作品を挙げていけば、ハリウッド進出のきっかけとなった『ミュリエルの結婚』(94)や、ユアン・マクレガーとクリスチャン・ベールが共演した『ベルベット・ゴールドマイン』(98)。アカデミー賞作品賞候補になった『めぐりあう時間たち』(02)に、キャメロン・ディアスと姉妹役で共演した感動作『イン・ハー・シューズ』(04)などなど。
いずれも作品に良きアクセントを与える名バイプレイヤーとしての活躍を見せているが、それが特に発揮されていたのは93%フレッシュを獲得した『アバウト・ア・ボーイ』であろう。“ラブコメの帝王”ヒュー・グラントが主演を務めた同作でコレットが演じたのは、後に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)で脚光を浴びるニコラス・ホルトが演じた少年の母親役。ヒッピー風の装いで情緒不安定な役柄というなかなかのインパクトを放つのだが、そんな彼女の存在が物語の感動へと繋がる重要な役割を果たす。
そしてコレットの代表作として忘れてはならないのは『リトル・ミス・サンシャイン』だ。数々の傑作を生み出してきたフォックス・サーチライトの2000年代を代表する傑作と名高い同作は、アビゲイル・プレスリン演じる幼い娘のオリーヴを美人コンテストに出場させるためにニューメキシコからカリフォルニアのビーチまでマイクロバスで旅をする家族を描いたロードムービー。
ここでコレットが演じているのは、スティーブ・カレルやポール・ダノらとにかく個性的な家族をまとめる母親役。クライマックスのコンテストの控室のシーンでの演技は見応え抜群で、母親として娘を見つめる目線は、それに呼応するプレスリンの魅力的な演技を巧みに引きだしている。個性的な登場人物のなかで自身の個性を爆発させながら、器用に共演者を立てる絶妙なバランス感。そしてどの作品でも必ずと言っていいほど見せる豊かな表情。こうした特技の数々こそ、近年彼女がブレイクを遂げた大きな理由であろう。
日本では今年3月に公開となった『ナイトメア・アリー』(21)では、ブラッドリー・クーパーを誘惑する色香漂うタロット占い師で新境地を開拓。まもなく日本公開を迎える『ドリーム・ホース』(2023年1月6日公開)も88%フレッシュという高評価を獲得している。実話を基にした同作では、共同馬主として競走馬に夢を託す労働者階級の主婦という役どころだ。
今後もモニカ・ベルッチと共演する『Mafia Mamma』や、『パラサイト 半地下の家族』(19)のポン・ジュノ監督がハリウッドで手掛ける『Mickey7』と、そのポテンシャルが発揮されそうな作品が待機している。まだまだ50歳の若さということもあり、これからも存在感を見せつけてくれることに期待したい。
文/久保田 和馬