重大な秘密を知ったキャシアン…いよいよ脱獄へのカウントダウンが始まる!「キャシアン・アンドー」第9話をレビュー
ロイのひと言で示される、第3章のクライマックスへのフラグ
ナーキーナ・ファイブから出られる日が近づいていた老人、ウラフが倒れるクライマックス。駆けつけた医療スタッフからキャシアンとロイが聞かされたのは、数日前に施設内で起きた異変と、それに絡む衝撃的な真実である。
「4階に収監されていた囚人が釈放され、その翌日に2階に収監された」。すなわち釈放というのは建前であり、ただの配置換えに過ぎないということだ。その真実を知った2階の囚人たちは皆殺しにされ、ナーキーナ・ファイブは一度入ると絶対に出ることができない場所であると裏打ちされる。帝国はなんとタチが悪いことか。
なにかを信じることが反乱への第一歩となるように、そこになんらかの裏切りが生じればたちまち大きな火種となって燃え広がる。キャシアンは再びロイに看守の人数を問う。するとロイは間髪入れずに「各階で12人ほど」と答える。この瞬間に両者は確実に結束し、囚人たちの反乱に向けたカウントダウンが始まったと見ていいだろう。
この“裏切りによって火が点く”というのは、シリル・カーンも同じである。ドラマ序盤では優秀な捜査官であったが、キャシアンとルーセンにしてやられたことで職を追われ、前回のエピソードではデドラに対して不当解雇であると訴えていた。しかしデドラが自分と同じようにキャシアンを追っていることを知り、待ち伏せまでして「生きる意味ができた」と愛情たっぷりの視線を送る。当然のようにデドラからは思いっきり拒絶されるわけだが、この2人が組むことになれば…というシリーズ前半からの期待はまだ捨てきれない。
ところでエピソードタイトルとなっている「誰も聞いちゃいない!」というのは、キャシアンがロイに話しかけるシーンから来ている。囚人を監視する帝国の連中は、俺たちの会話に興味を持っていないといったところだ。これは、議場で帝国の暴走を危惧するモスマのスピーチに野次が飛ぶシーンにも通じている。いずれにしても“誰も”というのは帝国であり、抑圧する側の者たちは、抑圧されている側の声や叫びはもちろん、反対意見ともなれば耳を貸しさえもしない。現実社会でも同じことが言えるだろう。
文/久保田 和馬