「アダムス・ファミリー」&『キャスパー』の人気子役から個性派へ…クリスティーナ・リッチが歩んできた独自の歩み
伝説的となった『バッファロー’66』での妖艶な佇まい
瞬く間に10代のアイコンとなったリッチのターニングポイントになったのが、アン・リー監督の『アイス・ストーム』(97)だ。この作品で彼女はセックスへの好奇心旺盛なティーンエイジャーを熱演。あどけなさを残したままきわどい役を演じ、それまでのイメージを払拭。『熟れた果実』(98)では、生意気で機転が利き、目的のためには手段を選ばない少女を演じて、ゴールデン・グローブ賞やインディペンデント・スピリット賞にノミネートされている。
10代半ばよりインディペンデント映画に積極的に出演するようになったリッチは、個性派としてキャリアを重ねていく。そんな彼女がヒロインを演じて話題を呼んだのが、ヴィンセント・ギャロ監督&主演の『バッファロー’66』(98)である。リッチが演じたのは、ムショ帰りのビリー(ギャロ)に拉致され、強引に彼の両親の前で妻役を演じさせられるレイラ。愛に飢えたダメ男を受け入れ、愛情を注ぐ薄幸そうな少女という役柄が絶妙にマッチしていて印象的だった。撮影当時17歳、ブロンドヘアに胸元の開いたドレス姿でダンスを踊る妖しげな姿はもはや伝説といっても過言ではない。
ティム・バートン監督作『スリーピー・ホロウ』や「マッハGoGoGo」原作の『スピード・レーサー』でも存在感を発揮
ティム・バートン監督作『スリーピー・ホロウ』(99)は、アメリカの怪談をベースにしたダークファンタジー。リッチが演じたのは怪事件の捜査にやって来た主人公イカボッド(ジョニー・デップ)に惹かれる地主の娘カトリーヌで、首なし騎士に命をねらわれるという役どころだ。現代劇が多かったリッチだが、19世紀が舞台のこの作品では仕立てのよいドレスに身を包んでしっとりした美しさを披露。恐怖におののく大きな瞳も印象的で、ホラーヒロインとしてのポテンシャルの高さを見せつけた。
「ワンダーウーマン」シリーズのパティ・ジェンキンスの監督デビュー作で、シャーリーズ・セロンがアカデミー賞ほか数々の主演女優賞に輝いた『モンスター』(03)。7人の男性を殺害した実在の殺人鬼を描いた本作で、リッチは主人公アイリーンの恋人セルビーを演じた。セロンはメイクを含め実在のアイリーンを研究して臨んだが、リッチのキャラクターは物語に合わせ脚色されていたため自由度が高かったという。セロンの演技は圧巻だが、粗野なアイリーンに依存しながら彼女の凶行を助長するリッチのリアルな演技も見逃せない。
その後もウディ・アレンのラブコメ『僕のニューヨークライフ』(03)、呪いによって豚鼻で生まれた女性を描いた『ペネロピ』(06)、性依存症を題材にした『ブラック・スネーク・モーン』(06)など多彩な作品に出演したリッチだが、そのキャリアで最も“ハリウッド大作らしい”作品が『スピード・レーサー』(08)だろう。彼女が演じたのは、主人公スピード・レーサー(エミール・ハーシュ)の幼なじみトリクシー。日本のアニメ「マッハGoGoGo」を原作とする本作で、リッチは原作同様ショートヘアーのヒロインをキュートに演じた。カラフルなCGで作られたアニメから飛び出したような世界観のなかで、リッチも赤やピンクの派手な衣装に身を包み、丸い輪郭に大きな目というアニメ顔が映えまくったという意味でも、レアな作品と言える。なお、リッチがこの作品に惹かれた理由の一つが、プロデュース・監督・脚本を手掛けたウォシャウスキー姉妹とのコラボ。この出演が『マトリックス レザレクションズ』(21)へのカメオ的な出演につながったのではないだろうか?