DCの歴史を変える最“恐”アンチヒーローは雷神ソー並の強さと茶目っ気!?『ブラックアダム』をマーベルヒーローと徹底比較で深掘り!
頭脳明晰でクールな嵐使い"サイクロン"
15歳でナノテクノロジー実験の被験者となった19歳のサイクロン(クインテッサ・スウィンデル)は、今回の任務で招集された唯一の女性メンバー。嵐を自在に操ることができ、敵や物を吹き飛ばしたり(コントロールも抜群!)、自身を宙に浮遊させたりしながら戦うスタイルを得意としている。その姿からは「X-MEN」のストーム、「アベンジャーズ」や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(22)のスカーレット・ウィッチを彷彿させる。それでいて、性格はMCU版「スパイダーマン」シリーズのヒロイン、MJのようなクールなキャラクターで、JSAではまだ新人ながら、明晰な頭脳を駆使してチームに貢献する様子は「ブラックパンサー」シリーズのシュリのようでもある。
愛嬌たっぷりのボケ担当?巨大化人間"アトム・スマッシャー"
もう一人、JSAには新人がいる。一見すると、どこにでもいそうな20歳の青年アル・ロススタイン(ノア・センティネオ)。彼は肉体の分子構造を変えることで巨大化し、馬鹿力を発揮するヒーロー、アトム・スマッシャーへと変身する。マーベルではアントマンが巨大化する能力を身に付けていたが、スマッシャーの動きは(巨大化した)アントマンよりもスピーディで、そこにアクションの見せ場が宿る。一方で、MCU版「スパイダーマン」のスパイダーマンことピーター・パーカーのようないまどきの若者の楽観主義も見て取れ、ジェット機から飛び降りる際に躊躇し、無駄口が多いところなどは、しっかり者のサイクロンとは反対にヒーローとしてはまだまだ未熟さが目立つ。巨大化するがゆえに、常人のサイズ感をつかめず、戦いの場がどこなのかすらわからなくなってしまうという、まじめなのにおふざけキャラに見えてしまうのはご愛嬌。ちなみに、日本語吹替版でスマッシャーの声を担当するのは、トム・ホランド演じるピーター役を務めた榎木淳弥。これはナイスなキャスティングだ!
アンチヒーロー、ブラックアダムとJSAのバトルはスリリングであるだけでなく、ユニークな疑問を観客に投げかける。なにが善で、なにが悪か?誰が正義なのか?そもそも正義とはなにを意味するのか?『ジャングル・クルーズ』(20)に続いてジョンソンとタッグを組んだジャウマ・コレット=セラ監督はヒロイックな作品を意識しつつも、ドラマにスパイスを忍ばせ、そこから浮かび上がったテーマ性でガツンとくる歯応えを与えてくれる。あなたにとって理想のヒーローは誰か?『ブラックアダム』の痛快な物語と多彩なキャラクターから、それを感じ取ってほしい。
文/有馬楽