16年ぶりに帰ってきた「Dr.コトー診療所」 離島で生きる人々のつながりを描いてきたドラマシリーズを振り返る
離島が舞台だからこその、緊迫感あふれる医療現場の現実
「Dr.コトー診療所」は離島医療という背景を抜きに語ることはできない。海外ドラマ「ER緊急救命室」をきっかけに増加した医療ドラマでは、ICUが設置されるような大型病院で発生する問題をスリリングに描くものが多く、目まぐるしく推移する手術シーンに代表される緊迫感あふれる描写が見どころとなってきた。「Dr.コトー診療所」にもこうした要素はあるが、どちらかといえば、日々の診療風景や島の人々とのやり取りなど生活に溶け込んだ場面が多く、離島ならではのゆったりとした空気が流れている。しかし穏やかな日常と対照的に、いや穏やかな日常だからこそ、そこには深刻な問題が潜んでいる。島で唯一の医師であるコトーは、出産から病気や老衰、不慮の事故でこの世を去る人まで一人一人の人生に関わっていく。文字通り生と死を見つめるのが離島の医師であり、「Dr.コトー診療所」には命と医療に関する洞察が随所に登場する。
第1期第4話で、東京から来た後輩医師のゆき(木村佳乃)に向けて言った「僕らは病気を診るんじゃない。人を診るんです」という言葉は、離島医療に携わるなかでコトーが得た実感そのものだろう。また、第2期最終話で、自身の執刀で妻を寝たきりにさせてしまった医師の鳴海(堺雅人)に「人として答えるならば、あなたが生きていると思っている限り、奥さんは生きています。医者として答えるならば、あなたが治療を続ける限り、やはり奥さんは生きている」と語ったように、医師また家族として患者と向き合うジレンマにも寄り添う。そこに通底しているのは人間としての眼差しだ。
限られた医療器具や環境の下で、命を救うため懸命に治療に当たるコトーの姿を目にすると、ドラマであることを忘れて応援したくなる。第1期第1話で、虫垂炎の剛洋を本島の病院に連れて行くため剛利が船を出すが、一刻を争う病状にコトーが洋上で緊急オペを行うシーン。不安そうに見守る剛利と苦痛に顔を歪めながら必死に耐える剛洋、新任の医師を信じる彩佳と和田の前で、コトーは失敗すれば島に居場所がなくなることも承知の上で、目の前の剛洋を救うため真剣かつ冷静にメスを振るう。集魚灯の光に照らされて手術の成功を告げた瞬間、安堵と共に思わず胸が熱くなった。
第2期最終話で彩佳のオペに臨んだコトーは不意の出血に取り乱してしまうのだが、鳴海に「医者ならオペのことだけ考えろ」と叱責され、冷静さを失っていた自分に愕然とする。家族同様の相手に執刀することはできないという医師の矛盾は第2期の裏テーマでもあったが、勇気を奮い起こして病気に立ち向かったコトーは、それまでに自分がしてきた行為と改めて向き合うことになった。