生田絵梨花が語る、アドリブで生まれるリアリティ『Dr.コトー診療所』で初の看護師役に挑戦
「新キャストとして共感できる部分がたくさんあり、とても心強かったです」
ロケ地、与那国島での撮影中は、共演者らと同じ宿に宿泊。近い距離感で日々を過ごす内に、関係も深まっていった。生田は「島の景色に緊張もほぐしてもらったような感覚がありました」と豊かな自然に想いを馳せる。そして、「カメラが回ってないところでも、皆さんが自然と私を会話の輪に入れてくださいました。温かい雰囲気のお陰もあって、緊張しながらも現場に入ることができました」と感謝の気持ちを明かした。
那美と共に新たにシリーズに登場する、King & Princeの高橋海人演じる新米医師、織田判斗も今作に欠かせないキーパーソン。東京の大病院の御曹司である判斗は、研修のために志木那島へやってくるという設定だ。
判斗役の高橋について生田は、「すごくチャラい役柄に、すごく真摯に悩みながら挑んでいたところが印象的で。役者として、それを感じさせないところもすごい方だなと思っていました」と語る。共に新キャストとしての境遇を分かち合う関係を築くことができたようで、「緊張する場面になったと時に2人とも目が泳いでいて、目が合ってお互いに察する…みたいなところがありました(笑)。新キャストとして共感できる部分がたくさんあり、とても心強かったです」と振り返った。
「看護師役は、無責任にアドリブはできないと思ったんです」
初めて挑んだ看護師役について、「段取りを覚えて、かつスムーズに動くということにすごく苦戦しました」と吐露した生田。手術シーンでは、撮影日とは別に「医療リハーサル」と呼ばれる日が設けられ、シーンでの動きをすべて事前に決めるのだという。「壮大な手術シーンになるので、リハーサルのあとも行程がたくさんあって。大変な作業でした」と回顧する。台本についても「当日にたくさん変わるんです」と明かす。「これはいままでの現場でもなかった経験ですね。必死についていきました」。
さらに、「看護師役は、無責任にアドリブはできないと思ったんです」と続ける。「例えば診療所で自分に焦点が当たっていないようなシーンでも、動きがないと不自然になってしまいます。那美が看護師としてどのような動きをするかを丁寧に現場で作っていきました」。
台本にはない、看護師としての那美の動きを演じるために、医療指導で現場にいた看護師から学びを得た。「言葉ももちろん必要です。だけど、手を握ってあげたりさすってあげたりというように、触れるだけでも、その方の精神状態に影響があるんです。なるべく不安にならないように『大丈夫ですよ』と声をかけ、手当てをする前にも『いま、〇〇しますからね』ときちんと伝える」といったような、現職の看護師から直接聞いた看護の考え方を活かし、リアリティのある動きを目指したようだ。
「難しいことではありましたが、すごく勉強になりました。セリフがなくても、看護師として、那美として、患者さんとコミュニケーションを取れるようになりました」と、看護師と患者という関係に説得力を持たせる演技ができたと、たしかな自信をのぞかせる。今作を経て、女優として新たな経験値を得た彼女はこれからも飛躍を続けていくだろう。
取材・文/山田健史
※ 高橋海人の「高」ははしご高が正式表記。