「アバター」のクオリッチ大佐、「ドント・ブリーズ」の盲目の老人…スティーヴィン・ラングがヴィランを演じる醍醐味を明かす
「アバター」シリーズの宿敵同士といえば、ナヴィとして生きることを選び、アバターとなった元海兵隊員のジェイク・サリーと、彼に裏切られ怒りを募らせている当時の上官マイルズ・クオリッチ大佐。前作『アバター』(09)のクライマックス、2人は壮絶なバトルを繰り広げ、最終的にクオリッチは死んだはずなのだが、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(公開中)で彼はアバターとになって登場し、ジェイクへの復讐に燃える。本作でも大バトルを展開するジェイク役のサム・ワーシントンとクオリッチ大佐役のスティーヴン・ラングに、撮影秘話や「アバター」シリーズについての想いなどを語ってもらった。
「ジェイクにとってクオリッチは、自分の過去を象徴するような存在」(ワーシントン)
――クオリッチ大佐はどうして生きていたんですか?前作で死んだものだと思っていました。
スティーヴン・ラング(以下ラング)「ジム(ジェームズ・キャメロン監督)にはクオリッチが帰ってくることは聞いていましたので、私はそれほど意外ではなかったです。ただ、どんな姿になって戻ってくるのかは知りませんでした。
確かに、多くの人がクオリッチが生きていることに驚くと思いますけど、そこにはある設定があります。1作目に登場したパンドラで希少鉱物を採掘する人間の企業には、一部の従業員のDNAを保存するという方針があった。それで会社は彼を再生しました。しかも、もっと大きく、よりパンドラに合った姿で。だから、私はナヴィの姿、アバターになっているんです」
――今回、描かれるジェイクとクオリッチの関係性については、どのように考えていますか?
サム・ワーシントン(以下ワーシントン)「海兵隊というのは、ひとつのファミリーなんですよ。ジェイクにとってクオリッチは、自分の過去を象徴するような存在なんだと思います。だからこそ大きな脅威になり、なかなか殺すことのできない相手になっているのかもしれないです。もしかしたら、過去というのは、決して消すことができないもので、向き合うことしかなすすべがない…なんて思ってしまいます。これからも続くジェイクの物語で、そういうことが描かれる可能性もありそうですよね」
ラング「クオリッチはすごく怒っていました。ジェイクのことをかわいがり、自分の兄弟のように接して確かな友情を育んでいると思っていたのに、完璧に裏切られてしまったので。そのフラストレーション、怒りは収まらなくて、今回もまた、彼を執拗に追いかけます」
「ヒーローは輝く存在だけど、彼らを輝かせるためには悪役が必要」(ラング)
――ラングさんは、クオリッチ大佐以外にも、近年では「ドント・ブリーズ」シリーズのユニークな悪役が印象的でした。悪役を演じる醍醐味を教えてください。
ラング「ストーリーがよりダイナミズムを持つためには、やはりヴィランは必要だと思います。ヒーローは輝く存在だけど、彼らを輝かせるためには悪役が必要なんです。ヴィランはみんなに恐怖を抱かせたり、不安や痛みを感じさせます。それを演じるのは結構、楽しいことなんですよ。普段できないようなことができるのもいいです。クオリッチの傲慢さや偉そうなところは、普通の生活じゃ許せないでしょう?(笑)」
――ワーシントンさんは、前作からの13年の間に、ご自身も父親になりました。その変化は、本作の演技で役立ちましたか?
ワーシントン「ジェイクにとても共感できるようになりました。僕には3人の息子がいて、ジェイクにも3人の子どもがいます。僕の息子たちが反抗的なように、ジェイクの子どもたちも反抗的。おもしろいですね(笑)。父親になって気づいたのは、子どもには自分のいいところと悪いところが反映されていること。そして、子どもを通して、自分をより知ることができます。そういった経験はジェイクの演技にすごく役立ちました」