「アバター」のクオリッチ大佐、「ドント・ブリーズ」の盲目の老人…スティーヴィン・ラングがヴィランを演じる醍醐味を明かす
「演技のディテールに至るまでがすべてキャッチされる、その進化はすごいと思った」(ワーシントン)
――今回の撮影における、パフォーマンス・キャプチャーはいかがでしたか。ワーシントンさんは2度目で、どういうところが進化していましたか?ラングさんは初めてですが、どんな体験でしたか?
ワーシントン「技術面ではとても進化していて、願わくば、自分の演技も同じように進化していればいいのにと思っていたよ(笑)。プロセスだけ取ると、前回とさして変わりはないんですけれど、演技のディテールに至るまでがすべてキャッチされていて、その進化はすごいと思いました。僕たち役者の演技に対する誇りみたいなものが、完璧にキャッチされていることで、ちゃんと守られているような気持にもなりました。技術への信頼を感じることができました」
ラング「パフォーマンス・キャプチャーというシステムは、『アバター』シリーズのなかで中心的なプロセスになっていると思います。私は前作ではパフォーマンス・キャプチャーはやらなかったですが、今回はそれをやることで、『アバター』という映画と、パンドラという星をしっかり経験できたように感じています。仕事としては決して易しくはないものの、サム(・ワーシントン)のような先輩もいれば、教えてくれる先生もいます。とても楽しい経験になりましたね」
――スクリーン上で自分の顔が映されてないにもかかわらず、アバターになったジェイクの表情は明らかに自分のもの、というシチュエーションは、どんな感覚なんでしょうか?
ワーシントン「もちろん、自分自身だと感じますよ。そういう技術面の進化があった今回は、1作目以上に感じています。水中に潜っているのも、泣いているのも、怒っているのも間違いなく自分。これは、アニメーションに代われるものじゃなく、未来形のメイクみたいな感じなのかな。それを施している自分を見ているとも言えるかもしれない」
「自分のほうがパンドラに適応していかなければいけない」(ラング)
――今後もお2人は「アバター」シリーズに関わっていきます。そのことについては、どう思われてますか?
ワーシントン「1本目の『アバター』は、新しい文化や人々、世界に目を開くドラマ。そして、2作目からは家族についてのドラマになるという解釈です。愛する者をどうやって守っていくのか?それが家族であれ、自然であれ、星であれ、もちろん自分が選んだ家族の形であれ、それを命を懸けて守っていくドラマです」
ラング「とても強烈な視点を自分に与えてくれる映画だと思っています。非常にミステリアスでパワフルな世界であり、自分をオープンにしないとパンドラとは付き合えないように感じます。パンドラが自分に合わせてくれるのではなく、自分のほうがパンドラに適応していかなければいけないんです。だからこそ、いろいろと学べる、その刺激はハンパないんです」
――最後に、ジェームズ・キャメロンは監督として、お2人の目にどのように映っているかを教えてください。
ワーシントン「ジムは恐れを知らないです。彼は常に自分自身に挑戦しています。自分や観客に対して挑戦的ではないような作品は、最初から作らないです。僕は、そういう彼と一緒に仕事をするのが大好きなんです」
ラング「ジムは間違いなく完璧主義者。ですから、現場には独特な厳しさがあります。でも、それと同時に楽しくもあります。ジムはすばらしいユーモアのセンスをもっているから。細かいことをやる時は厳しさが必要で、常に100%本気でやります。でも、それが終わると息抜きしてプレッシャーから解放されます。厳しさと笑いに満ちた現場ですよ」
取材・文/渡辺麻紀