柳楽優弥主演「ガンニバル」がすごいらしい。ディズニープラス「スター」野心作に期待が膨らむ理由とは
動画配信サイトの普及によってクリエイターの活躍のフィールドが広がり、日本から世界中に向けて発信されるドラマシリーズが作られる時代になった。ディズニープラスの「スター」で12月28日(水)から独占配信される「ガンニバル」は、その流れを汲む今年最大級の話題作と言えるだろう。累計発行部数210万部を超える二宮正明の同名コミックを映像化したこのオリジナル実写シリーズは、センセーショナルなテーマ、圧倒的なクオリティの両面で特筆すべき“本格派”のスリラー大作なのである。
ドラマの舞台となるのは、都会から遠く離れた山間部に位置する供花村。ある事件をきっかけに左遷された警察官、阿川大悟(柳楽優弥)が、妻の有希(吉岡里帆)、幼い一人娘のましろ(志水心音)を伴い、謎の失踪を遂げた駐在の後任としてこの村に赴任してくる。大悟は人なつこい村人たちの歓待を受けるが、着任早々に不可解な出来事に遭遇し、奇怪な噂を耳にすることになる。「この村では、人が喰われているらしい」。やがて独自の捜査を開始した大悟は、村に隠された恐るべき秘密に迫っていく…。
文明社会の“最大のタブー”に真っ向から切り込む!
私たちの文明社会における最大のタブーというべきセンセーショナルなテーマに真っ向から挑んだ本作は、ゾンビや悪霊が猛威をふるうようなホラーではない。観る者は主人公、大悟の視点を通して、表向きは平和でのどかな供花村の想像を絶するダークサイドを覗き込んでいくことになる。
この村では広大な山林を所有する後藤家の一族が、山の麓に住む村人たちを実質的に支配している。大悟は後藤家の武闘派集団としばしば衝突し、村人たちの悪意や監視の目にさらされ、孤立無援の状況で幾度となく絶体絶命の危機に見舞われていく。それでも正義感の強い大悟は、最愛の家族を守りながら真相究明をあきらめない。供花村では本当に“人喰い”が行われているのか。自らも疑心暗鬼に陥り、狂気の渦にのみ込まれていく大悟の行く手には、いかなる脅威が立ちはだかるのか。“ヴィレッジ・サイコスリラー”と銘打たれた本作は、田舎特有の村社会を覆う閉塞感と、よそ者ゆえに村八分に遭う主人公一家の悪夢のような運命を、このうえなくリアルに紡ぎ上げた極限心理ミステリーでもあるのだ。
人間の内に潜む闇をあぶり出してきた、気鋭のクリエイター陣
上記のような野心的できわどいテーマ、ストーリーをディズニープラス「スター」で映像化した本作は、それだけでも大いに好奇心をそそられるが、クリエイター陣の顔ぶれがさらなる期待感を高める。メガホンを託された片山慎三は、かつて『パラサイト 半地下の家族』(19)で名高いポン・ジュノに師事し、映画作りの奥義を学んだ気鋭監督。初長編のインディーズ映画『岬の兄妹』(18)で脚光を浴び、商業映画デビューを飾った犯罪スリラー『さがす』(22)でも絶賛を博した。確かな演出力で人間の闇に切り込んできた片山監督にとって、日本のドラマとしては異例のスケールの大きさを誇る本作は新たなチャレンジとなる。
さらに脚本を手掛けたのは、『ドライブ・マイ・カー』(21)で濱口竜介監督と共にカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した大江崇允だ。ドラマシリーズならではのメリットである尺の長さを存分に生かし、大悟と家族の絆、後藤家との対立劇、村人たちとの葛藤などの多彩な人間模様を描出。片山監督の技巧を凝らしたサスペンスフルな語り口と相まって、観る者の本能的な“怖いもの見たさ”をかき立てるストーリー展開に引き込まれずにいられない。