“人喰い”の真相が明らかに…?邪悪の根源に揺れ動く「ガンニバル」第6話レビュー
供花村の闇に引きつけられる大悟の凶暴性
最大の情報は、銀の死因への言及だ。大悟は頼りにしている監察医の中村(小木茂光)から呼び出され、銀は食人の風習があるパプアニューギニアのフォレ族の風土病「クールー病(通称・狂い病)」だったと告げられる。元駐在の狩野が、銀を中村の診察室に連れてきた時の回想シーンで、食人によって感染する脳疾患に侵され、狂ったように笑いながら暴れ回る銀を、まるで獣のように体現する倍賞美津子が圧倒的だ。中村は過去のカルテをさかのぼり、供花村でクールー病にかかった人物がもう1人いたと大悟に報告する。1951年当時6歳だった少年で、生きていれば現在75歳。大悟はこの人物こそが、第2話で自分に襲いかかってきた巨大な老人で、村の人々が畏れる“あの人”だと確信する。
得体の知れなかった邪悪ななにかがその実像のようなものを明らかにした瞬間に、作品の“魔法”が突然効力を失ってしまうことがある。しかし本作では、銀と“あの人”の実像がクリアになればなるほど、後藤家や供花村という共同体の闇が、渦のように視聴者を巻き込んでいく。その闇に誰よりも引きつけられている人物こそが、主人公の大悟である。職業的な正義感はもちろんあるだろうが、“暴力警官”というレッテルを貼られるほどの凶暴性を孕む大悟は、特に初期は己の暴力性を吐き出す口実を求めて後藤家に執着しているようにも見えた。供花村の人たちが村の掟で大悟の精神と肉体を締め付けようが、彼は目を爛々と輝かせ、生命力を増していく。供花村の男を返り討ちにした大悟を見て、妻の有希(吉岡里帆)が放った「あんたさ、なんか楽しそうじゃない?」という一言に、共感した人は多いのではなかろうか。
後藤家当主であることに苦悩する恵介からも目が離せない
供花村に、年に一度の奉納祭が近づいてきていた。大悟は来乃神神社の次期神主である神山宗近(田中俊介)から、この村ではかつて、祭の際に人間を生贄として奉納していたと聞き、加奈子の赤子が生きている可能性に気づく。その頃、銀の孫で次期後藤家当主の恵介(笠松将)が、子どもたちを閉じ込めた極秘の地下牢に弟の洋介(杉田雷麟)を連れて行く。そして「本家に生まれた者が通る道。“あの人”に捧げるための義務じゃ」と、子どもたちの世話を命じる。
続く第7話はシリーズ最終話。銀と“あの人”が人を喰っていたとして、恵介も後藤家の当主になったら人を喰わなければいけないのか。かつて交際していた前駐在の娘である狩野すみれ(北香那)から「赤ちゃんができた」と告げられた恵介は、親になり後藤の血を子に継承させるのか。そもそもなぜ“あの人”に生贄を捧げなければいけない(奉納を断絶できない)のか。またしても後藤家に捉えられてしまった大悟はどうなるのか。明らかに揺れ動いている後藤洋介が、ゲームチェンジャーとなるのか。そもそもこれらの疑問が、すべてラスト1話で解決するのか。
ただ一つ確かなのは、本作の主人公は大悟だが、(性別はさておき)ヒロインは恵介だということ。当主としての苦悩を袂に隠し、紋付袴とざんばら髪で「今日からわしが当主だ」と宣言した恵介の惚れ惚れするような麗しさにそう確信した。彼が土地の呪いから解放されるのか、それとも土地と心中するのかは、大悟の肩にかかっている。
文/須永貴子