デンゼル・ワシントン版を超えるエッセンスとは?全米で記録的人気作「イコライザー」に迫る

コラム

デンゼル・ワシントン版を超えるエッセンスとは?全米で記録的人気作「イコライザー」に迫る

ハリウッドの大作を中心に、最新作から往年の名作まで、海外ドラマを24時間オンエアする海外ドラマ専門チャンネルAXNでは、2021年に全米で記録的人気を誇った話題作「イコライザー」を昨年9月に放送し、2月11日(土)よりシーズン2の独占放送がスタート。海外ドラマ評論家の池田敏が本作にフィーチャーし、「イコライザー」の原点とも言える1980年代のドラマから2010年代に製作された映画版を振り返りながら、最新ドラマと“イコライザー”の魅力を深掘りしていく。

悪を粛清するため、常に目を光らせている(「イコライザー」)
悪を粛清するため、常に目を光らせている(「イコライザー」)[c] 2021 Universal Television LLC and CBS Studios Inc. ALL RIGHTS RESERVED.

全米テレビ界で快進撃を続けているドラマ「イコライザー」は、シーズン2の全米放送が終わってすぐシーズン3、4への継続が決まり、ロングランに発展しそうな勢いだ。主演は人気のラッパー&歌手だったが、映画『シカゴ』(02)、『TAXI NY』(04)などで女優としても活躍するクイーン・ラティファ。主人公が女性であることも大きなヒットの要因となっているようだ。

しかし、この企画の実現は困難だったはず。そもそも元ネタは1980年代のドラマ「ザ・シークレット・ハンター」(1985~1989)も、名優デンゼル・ワシントン主演で映画化した「イコライザー」2作も人気で、これらに負けない作品を目指さなければならないからだ。

無害そうな初老の男がギャングたちやっつけていく「ザ・シークレット・ハンター」

「ザ・シークレット・ハンター」の主人公は、かつて秘密組織“カンパニー(ほぼ間違いなくCIA)”で働いて引退した初老の男性ロバート・マッコール(エドワード・ウッドワード)。彼は自分が暮らすニューヨークで善良な住民たちを救うべく、ギャングなどの犯罪者をやっつけていく。ちなみに筆者が初めてニューヨークに行ったのは1992年だが、はっきり言ってまだ治安は悪かった。

またこの基本設定、日本の時代劇「必殺」シリーズのようだが、むしろ近いのは『狼よさらば』(74)に始まった、チャールズ・ブロンソン主演の「Death Wish」シリーズ。ブロンソンが演じる主人公ポール・カージーは街のワルどもに制裁を加えていったが、持つ武器がどんどんとパワーアップし、まるでシルヴェスター・スタローンが主演を務めた「ランボー」シリーズの老人版のようになっていった。そして、「ザ・シークレット・ハンター」のマッコールも普段はクールだが、いざとなれば若い悪党をぶん殴り、拳銃やサブマシンガンを撃ちまくる、恐れ知らずのタフガイだった。

かつて秘密組織に所属していた初老の男性が主人公の「ザ・シークレット・ハンター」
かつて秘密組織に所属していた初老の男性が主人公の「ザ・シークレット・ハンター」[c]Everett Collection/AFLO

マッコールがユニークなのは、いつもネクタイを締め、スーツの上にコートを羽織った、まさに紳士ということ。マッコールという名字から推測するとおそらくルーツはアイルランド系で、演じたウッドワードはイングランド出身。つまり腕っぷしが強いだけでなく、英国の名探偵のように知的でクールなイメージもあった。

ちなみにこのドラマのスタッフは、同じ1980年代に人気を博したマイケル・マン監督のドラマシリーズ「マイアミ・バイス」と重なる。特に、のちに「24 -TWENTY FOUR-」を企画するジョエル・サーナウが脚本として参加しており、ジャック・バウアーに通じる凄みをマッコールに感じなくもない。

それにしても老人が犯罪者たちを倒すこのドラマの意外性は高く、数々の映画やドラマで“いじられる(?)”ことも多い。最近だと映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)で、「(ニューヨークの)ここで1980年代に『ザ・シークレット・ハンター』のロケが行われた」なんて台詞があった。

デンゼル・ワシントン演じる元特殊工作員の“殺人マシン”の活躍を描く『イコライザー』

そして、2014年に映画化したのが、デンゼル・ワシントン主演の『イコライザー』。同じ名前のロバート・マッコール(ワシントン)を主人公にしたが、21世紀的なアクション映画にアレンジ。びっくりするほどワイルドに生まれ変わっていた。

ボストンのホームセンターで真面目に働くマッコールは、トラブルに巻き込まれた知り合いの若い売春婦テリー(クロエ・グレース・モレッツ)を救おうと、ロシアンマフィアと全面対決へ。素顔は“エージェンシー(CIA)”の元特殊工作員、なのにいまや電車とバスでホームセンターに通勤している小市民というのが泣かせる。しかし絶対に怒らせてはならない。マッコールは一流の殺し屋としてのスキルをまだ忘れていなかった。手ぶらなのに目の前のギャングたちを16秒で倒すと決め、わずか3秒オーバーの19秒でぶちのめす“殺人マシン”だ。

主人公はホームセンターで真面目に働くマッコール(『イコライザー』)
主人公はホームセンターで真面目に働くマッコール(『イコライザー』)[c]Everett Collection/AFLO


ワシントンの安定した存在感もあってこの映画は大ヒットし、続編『イコライザー2』(18)が作られ、さらに9月1日(金)には第3作『The Equalizer 3』が全米公開される予定。3作続けてワシントンはアントワン・フークア監督とタッグを組んでいるが、このコンビではほかに『トレーニング デイ』(01)、『マグニフィセント・セブン』(16)といった作品が作られていることからも、その信頼の高さが伺える。

マッコールの正体は元特殊工作員で、ギャングたちをわずか19秒でぶちのめす“殺人マシン”だ!(『イコライザー2』)
マッコールの正体は元特殊工作員で、ギャングたちをわずか19秒でぶちのめす“殺人マシン”だ!(『イコライザー2』)[c]Everett Collection/AFLO
イコライザー シーズン2(全18話)
AXN独占放送

字幕版:2月11日(土) 毎週土曜日 23:00スタート
二カ国語版:2月15日(水) 毎週水曜日 23:00スタート

イコライザー シーズン1(全10話)
二カ国語版:2月6日(月)~2月10日(金) 12:00スタート 2話連続
字幕版:2月11日(土)12:30スタート 全10話 一挙放送

「イコライザー」公式サイトはこちら

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