『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』でアイドル的人気を博した子役が再フィーバー。キー・ホイ・クァンは“空白の期間”、なにしてた?
役者本格復帰作での見事な演技で大ブレイク!
そうして役者復帰の意欲に燃えたキーが出会った作品が『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』だ。
本作は、反抗期の娘や頼りにならない夫らと暮らし、破綻寸前のコインランドリーの経営などの問題に頭を悩ませる中国系の女性エヴリン(ミシェル・ヨー)が、突如として多次元の全人類の命運を懸かった壮大な戦いに身を投じることになる、マルチバースを題材にした奇想天外なSFアクション。
キー・ホイ・クァンが演じるのはエヴリンの夫、ウェイモンド。物語のベースとなる次元では優しく頼りないが、別の次元では宇宙を股にかけてカンフーで悪に立ち向かう頼もしい男というキャラクターだ。アクションもできるうえ、ある瞬間ではコミックリリーフとなり、別の瞬間にはヒーローになれるという演技力も必要とされる難しい役どころだ。
ゆえにキャスティングに難航していたが、監督であるダニエルズの一人、ダニエル・クワンがある日、Twitter上でショート・ラウンドの写真を見て「この男はいま、なにをしているんだ?」と思ったことをきっかけに声がかかったそう。
期待に応えるように得意とするアクションではキレッキレの動きを披露。警備員を撃退するシーンでは、ウエストポーチをヌンチャクのように扱うユニークな戦闘を披露しており、高く上げた脚の股下を通してポーチを振り回したり、紐部分を敵の腕に絡ませて動きを封じたり、見事な手さばきと軽快な動きで健在っぷりをアピール。
また、優しい夫とヒロイックな夫がシーンごとに目まぐるしく切り替わる様子も、穏やかな微笑みと自信と色気に満ちたクールな表情を瞬時に使い分ける演技や多彩な節回しで体現。観客に一目でわからせる巧みな芝居で役を表現した。
成功を収めた人生から挫折して悲惨な人生まで、無数にある人生のすべてを肯定するような本作の脚本に対し、決して順風満帆とは言えなかった人生を送ってきた自分のために書かれたものだと勘違いするほどシンパシーを感じたというキー・ホイ・クァン。
頼りなくもどんなものも受け入れる器の大きいウェイモンドを、酸いも甘いも知り尽くした経験を詰め込んだ演技で魅力的に浮かび上がらせており、深みのある表情には思わず心を掴まれてしまうことだろう。
本作で高い評価を受けたキーは、同じくマルチバースを扱うマーベル・シネマティック・ユニバースのドラマシリーズ「ロキ」シーズン2への出演も決定。今後の活躍にますます期待したいところだ。
文/サンクレイオ翼