日本で観られそうな目玉作品も。サーチライト、A24、Netflix…サンダンス映画祭で見つかる映画ファン必見作は?
『Past Lives』『Polite Society』『Fair Play』など、日本でも観られそうな“目玉作品”も!
賞レースだけでなく、年間を通して「これはおもしろい!」と話題になる作品が多く揃うのがサンダンス映画祭。今年のサンダンスから、2023年と2024年にエンターテインメント界隈を賑わせ、日本でも観られそうな作品をピックアップしてみたい。
オンラインとインパーソンのハイブリッド開催となった今年のサンダンスでは、一部の“目玉作品”がユタ州の会場のみで上映された。なかでもA24、韓国のCJ ENM、そして『キャロル』(15)などを手掛けた名プロデューサーのクリスティーン・バションのKiller Filmsによる『Past Lives』は、多くの批評家や観客が「今年のベスト」に選んでいる。韓国系アメリカ人女性(ドラマシリーズ「ザ・モーニング・ショー」のクロエ役のグレタ・リー)が、現在の白人男性のパートナーと昔の恋人の韓国人男性との間で揺れる物語で、監督のセリーヌ・ソンは劇作家から映画監督デビューとなった。2月の第73回ベルリン国際映画祭でも上映され、2023年中にA24が北米公開予定。
フォーカス・フィーチャーズは、製作作品の『Polite Society』と観客賞受賞の『A Thousand and One』を出品、どちらも春頃に北米公開になる。『Polite Society』は、スタントウーマンを目指すパキスタン系イギリス人の妹(「ブリジャートン家」のプリヤ・カンサラ)が、アーティストを目指していた姉の突然の玉の腰結婚を阻止しようと奔走する物語で、アクションとミュージカルを混ぜた軽快なコメディ作品になっている。
「ブリジャートン家」のダフネ役、フィービー・ディネヴァーと『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(18)のハン・ソロ役オールデン・ケイレブ・エアエンライクが主演する『Fair Play』は、ニューヨークのヘッジファンド企業で社内恋愛中の2人が陥る心理サスペンス。Netflixは2000万ドル(約26億円)以上で全世界配信権を取得した。同じく2000万ドルでApple TV+が落札したのは、『はじまりのうた』(13)、『シング・ストリート 未来へのうた』(16)のジョン・カーニー監督の新作『Flora and Sons』。ジョセフ・ゴードン=レヴィットとU2のボノの娘であるイヴ・ヒューソン(Apple TV+「バッド・シスターズ」)による、ダブリンを舞台にしたミュージカル。
サーチライト・ピクチャーズは、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(19)のトリプルA役のモリー・ゴードンが主演と共同監督を務める『Theater Camp』を800万ドル(約10億円)で購入、劇場公開も予定している。ベン・プラットや「一流シェフのファミリーレストラン」のシドニー役アイオウ・エディバリーが出演、子ども向けのミュージカルキャンプのモキュメンタリー(擬似ドキュメンタリー)で、笑えて泣ける楽しい作品だ。今作は、審査員特別賞アンサンブルキャスト賞を受賞している。もう1本の『Rye Lane』はイギリスのレイン・アレン・ミラー監督の長編初監督作で、HBOのドラマ「インダストリー」のデヴィッド・ジョンソンらによるコメディ。カラフルな画作りと、アンダーグラウンドのパーティで繰り広げられる会話劇がおもしろい。
Netflixは、「メディア王 〜華麗なる一族〜」の長女シヴ役でおなじみのサラ・スヌークがオーストラリアに戻り主演したサイコサスペンス『Run Rabbit Run』をピックアップ、監督は「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」や「シャイニング・ガール」のエピソード監督を務めたダイアナ・リード。ガエル・ガルシア・ベルナルがルチャ・リブレのエクソティコで活躍するカサンドロを演じる伝記映画『Cassandro』は、Prime Videoが配信予定。
ドキュメンタリー作品では、NBAのゴールデンステート・ウォリアーズ所属のスター選手、ステフィン・カリーの『Stephen Curry: Underrated』、難病パーキンソン病と闘病するマイケル・J・フォックスの半生を綴る『STILL: A Michael J. Fox Movie』はApple TV+で2023年に配信予定。深海を潜るフリーダイビングの世界で世界新記録を目指すダイバーを追う『The Deepest Breath』はA24などの共同製作で、Netflixが2023年中に配信する。また、公開・配信は未定だが日本のオウム真理教を題材にした『AUM: The Cult at the End of the World』も上映された。2020年のサンダンス出品作『83歳のやさしいスパイ』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされたマイテ・アルベルディ監督の新作は、アルツハイマー病と向き合う夫妻の『The Eternal Memory』で、ワールドドキュメンタリー部門審査員賞を受賞している。
これらの作品のほかにも、ボディビルダーを目指す黒人青年の精神的抑圧の物語『Magazine Dreams』や、北朝鮮から中国へと亡命する人々の『Beyond Utopia』(USドキュメンタリー部門観客賞受賞)など、今後配給が決まると話題になりそうな作品も多い。例年よりも配給会社の財布の紐は固いようだが、配信系の作品は日本でもすぐに観られるようになることだろう。
文/平井 伊都子