通常の映画とは違うムードの『バビロン』、意味深なタイトルの『エゴイスト』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、『ラ・ラ・ランド』(16)のデイミアン・チャゼルが、豪華スターを迎えハリウッドのゴールデンエイジを描くミュージカル、鈴木亮平と宮沢氷魚が、惹かれあう男性2人に扮するドラマ、「新感染」のヨン・サンホとスタジオドラゴンがタッグを組んだ“Kゾンビ”映画の、バラエティ豊かな3本。
映画100年の歴史を歩んだような重量感を味わえる…『バビロン』(公開中)
いまから約100年前のハリウッドが、こんな凄まじい世界だったとは…。『ラ・ラ・ランド』(16)では映画の世界をロマンチックな装いも込めて描いたデイミアン・チャゼル監督だったが、この新作は“強烈さ”もたっぷり挿入。オープニングからいきなり目を疑う衝撃シーンが用意され、そこからハリウッド黄金時代の、ありえないほどあやしくゴージャスなパーティの会場に、われわれ観客は放りだされていく。明らかに通常の映画とは違うムードや展開に呆気にとられる人も多いはず。
映画がサイレントからトーキーへ移る激動の時代がバックなので、当時の戦争アクション大作がどう撮られていたか、スターたちはどんな存在だったのか…など、映画ファンなら絶対に記憶に残したいネタの宝庫。ブラッド・ピットやマーゴット・ロビーが演じる役は、有名スターがモチーフになっているものの、彼らが現代的センスもまぶして体現するので、共感させるポイントも多い。そしてすべてを観届けた瞬間、映画100年の歴史を歩んだような重量感を味わえるのは間違いない。(映画ライター・斉藤博昭)
鈴木亮平と宮沢氷魚にまず賛辞を贈りたい…『エゴイスト』(公開中)
語気が強くて不穏なタイトルだ。映画は問いかけてくる。誰を、そしてなにを指して“エゴイスト”と表明しているのか、と。
出会ってしまった2人がいる。東京の出版社でファッション誌の編集者をしている浩輔と、シングルマザーである⺟と細々と暮らすパーソナルトレーナーの龍太。このゲイカップルを演じ、いま必要な“クィア映画”を立ち昇らせた鈴木亮平と宮沢氷魚にまず賛辞を贈りたい!
場の空気感が持続していく演出。人物の後ろ姿のショットやクローズアップを多用した、基本ワンシーンワンカットのカメラワーク(撮影は昨年、『さがす』、『死刑にいたる病』などを手がけた池田直矢だ!)。画面を見つめながら「これはガス・ヴァン・サントか、ダルデンヌ兄弟か」と考えていたのだが、上映後、松永大司監督がスタッフに後者の傑作『息子のまなざし』(02)を観せていたと知って、さらに本作が好きになった。
不意を突かれ、驚かされたのは龍太の母親役、阿川佐和子が何気なく差しだす日常感!終盤、彼女からポツンとこぼれた一言に目が潤み、視界が滲んだ。(映画ライター・轟夕起夫)
“呪呪呪”のつるべ打ちに圧倒されっぱなし…『呪呪呪/死者をあやつるもの』(公開中)
ウイルス感染系ゾンビ映画の大ヒット作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(17)のヨン・サンホ監督が脚本を手がけた本作は、いわゆる“呪術系ゾンビ”が猛威をふるうアクション・ホラー。死者が引き起こした謎だらけの殺人事件をめぐり、その黒幕の正体を追う女性ジャーナリストの運命を映しだす。
呪術によって操られた100体のゾンビが、アスリートのようなキレキレの身体能力で集団攻撃を仕掛けてきて、怒濤のカーチェイスにまでなだれ込むスペクタクル・シーンに驚愕。さらに民俗学の教授が呪術のウンチクを披露し、後半に登場するキュートな少女呪術師の活躍ぶりも見逃せない。まさに“呪呪呪”のつるべ打ちに圧倒されっぱなしの新感覚エンターテインメントだ。(映画ライター・高橋諭治)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼