東出昌大が魂の演技で挑んだ『Winny』から嘘みたいな実話まで、映画で描かれる“天才”たちの劇的な生き様
歴史の闇に葬られた暗号解析の天才を描く『イミテーションゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
金子やザッカーバーグの主戦場である、コンピュータの礎を築いた天才の生涯も映画になっている。彼がいなければ21世紀の天才たちは生まれなかったどころか、現代のような技術の進歩も成し得ていなかったのではないだろうか。
ベネディクト・カンバーバッチがイギリスの数学者アラン・チューリングを演じた『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(14)では、第二次世界大戦下にドイツ軍の暗号エニグマを解読するという極秘任務に就いたチューリングが、大勢の命を救うという使命を抱えながら危険な作戦へと身を投じていく様が描かれる。
各分野の精鋭が集まったチームのなかでも、飛び抜けた才能から周囲を寄せ付けようとしなかったチューリング。彼がエニグマの暗号を解読したことによって、第二次世界大戦の終結が数年早まったとも言われており、大勢の命を救うことになった。しかしながら、その任務が極秘であったためにその功績は数十年にわたって封印され、さらにチューリングは同性愛者であるという理由で逮捕されてしまう。
不当な逮捕を経て、40代前半であまりにも早すぎる死を迎えるチューリングの人生もまた、42歳で病死した金子と重なるものがある。そして、チューリングの提唱した“チューリングマシン”という概念は、現在のコンピュータ科学の基礎となるのだが、チューリングの名誉が回復されたのは、2013年。彼の死から60年近くも経ってのことだった。
発明王エジソンを負かした天才の不遇な生涯『テスラ エジソンが恐れた天才』
死後になってその功績が認められる。アラン・チューリングも然り、金子勇も然り、先見性に富んだ天才たちにとってそれは宿命のようなものなのかもしれない。発明王トーマス・エジソンと対立したニコラ・テスラという天才発明家もまた、その宿命を背負った1人だった。
『テスラ エジソンが恐れた天才』(20)では、イーサン・ホーク演じるテスラと、カイル・マクラクラン演じるエジソンが繰り広げる“電流戦争”と、天才ゆえの孤独を抱え不遇な運命をたどることになったテスラの人生が描かれていく。移民としてニューヨークに渡り、エジソンのもとで働き始めたテスラは、直流送電を構築しようとするエジソンと対立し、数ヶ月で決別。やがて交流送電で時代の寵児となるテスラは無線の実現に向けて動き始める。
幼少期から交流送電の可能性に魅せられたテスラは、“天才肌の発明家”とも称される風変わりな人物。彼が開発した世界初の交流送電による発電装置は現在の家庭用コンセントなどにも応用されるなど、近代の文明の発展に大きな貢献をしたものの、晩年には資金調達の面で苦悩を抱える。亡くなったときには無一文だったとも言われている。
死後数十年が経って、彼の遺した発明の資料はユネスコ記憶遺産へ認定。かのイーロン・マスクが自身の会社にテスラの名前を付けるほど信奉しているなど、後世への影響は計り知れない。またテスラが提唱した“世界システム”と呼ばれる無線送電装置は、現代のワイヤレス充電の着想の原点とも言える。誰にも理解されぬまま、テスラが人生を懸けて研究した技術が、100年の時を経てその夢を叶えることになった。まさに、時代がようやくテスラに追いついたのである。