笑えて泣けるマルチバース『エブエブ』監督コンビ、ダニエルズにインタビュー!「タイトルが映画作りのゴールになりました」

インタビュー

笑えて泣けるマルチバース『エブエブ』監督コンビ、ダニエルズにインタビュー!「タイトルが映画作りのゴールになりました」

2月末時点での世界興行収入1億754万ドル(約147億円)で、A24配給作品歴代1位を記録する『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(公開中)。昨年3月にテキサス州オースティンのSXSWでプレミア上映され、3月25日に全米10館で公開、翌週4月1日に38館、翌々週4月8日に1250館で拡大公開された。公開から徐々に口コミとリピーターが増え続け、劇場公開終了の10月の時点で米国国内興行収入が約7000万ドル(約95億円)を計上。年明け1月のゴールデン・グローブ賞、映画放送批評家協会賞での受賞とアカデミー賞10部門11ノミネートを受けた1月27日より、1400館で再度劇場公開されている。

【写真を見る】ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートによるダニエルズが、明るい笑顔でインタビューに応じてくれた
【写真を見る】ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートによるダニエルズが、明るい笑顔でインタビューに応じてくれた

カリフォルニア州、ロサンゼルス近郊シミバレー。ランドリーを経営するアジア系移民一家が、事業や家族間の悩みや問題を受けてバースジャンプし、別次元にワープしてしまう…という奇想天外なストーリーが、なぜここまで受け入れられ、支持されたのか。脚本・監督を務める監督デュオのダニエル・シャイナートダニエル・クワンによるダニエルズは、公開から約1年の長い道のりをかけて、この映画が観客1人1人に届いた意味を考えていたと言う。2人の役割分担について聞いたところ、「お互いが得意そうなものはあえて交換」「ストレスレベルを考えて交代」という、とても有機的なコラボレーションが行われているそうだ。それはまさに、映画の中でエヴリン(ミシェル・ヨー)とウェイモンド(キー・ホイ・クワン)夫妻と娘のジョイ(ステファニー・スー)が、性別や立場によって振り分けられた役割を交換しながら協働し家族というユニットを築いている姿に重なった。この作品が楽しく、エキサイティングで、笑えて泣けるマルチバースな映画になった理由は、それぞれのダニエルが内包する様々なジャンルを交換し、変容させながらできあがった作品だからなのだろう。

映画賞を総なめにしている話題作!「おもしろい作品を作りたかっただけ」

優しいだけで頼りにならない夫と、父親の介護に反抗期の娘など、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン
優しいだけで頼りにならない夫と、父親の介護に反抗期の娘など、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン[c]2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

――日々たくさんの映画賞を受賞されていますね。おめでとうございます。

ダニエル・クワン「どうもありがとうございます。本当にたくさんの賞があるんですね…」

ダニエル・シャイナート「なぜ、“賞レースシーズン”と呼ばれているのかがわかりました。この時期は毎日たくさんの授賞式が行われているからなんですね」

――正直なところ、毎日あなた方の作品名とお名前が連呼されるのを、どういうふうに感じていますか?

クワン「日本語で同じような言葉があるかわからないけれど、英語で“Embarrassment of Riches(良いものが多すぎるという意味)”という言い方があります。まさにそう感じていて、毎日、様々な賞をいただいたら自分のSNSで投稿すべきだとわかっているんだけど…なんというか、ダサいかなって思っちゃって。日々、『俺の人生はこんなにすばらしいんだぜ』と投稿しているようで…。でも実際の僕達はただの負け犬のままで、おもしろい作品を作りたかっただけです。受け取られ方にとても感激していて、まだこれらの賞の意味を理解している途中だけど、キャストやスタッフが受賞するのはとても嬉しいです。そして、人々がこの映画を観て共感してくれただけで、報われたと感じています」


――世界興行収入が1億ドルを超えたのですから、もう自分たちを負け犬とは呼べませんね。

シャイナート「ダン(クワン)はスケートボードを集めているんだけど、僕らはとてもへたくそなんです。むしろそれが良くて、『ああ、俺たちはまだ負け犬だよな』って、謙虚さを忘れずにいられます。昨日(転んでお尻を打った)ダンのケツがよく知っているように(笑)」

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