笑えて泣けるマルチバース『エブエブ』監督コンビ、ダニエルズにインタビュー!「タイトルが映画作りのゴールになりました」
『エブエブ』は旬なアジア系アメリカ人アーティストのショーケースのような作品
――タイトルとともに、Mitskiとデイヴィッド・バーンによるエンディングソング「This is a Life」がとても印象に残り、アカデミー賞歌曲賞にもノミネートされました。映画館でエンドロールを眺めながら、観客は涙を浮かべていました。
クワン「そう言ってもらえてとてもうれしいです。おもしろいのは、当初はエンディングクレジットにオリジナル楽曲を流す予定はなかったんです。つまり……製作費が足りなかった。この映画は、僕らの野心に比べてかなりの低予算で作られているので。初号試写でA24に見せたら、『この映画はなかなかクールじゃないか。もう少し音楽に予算をかけちゃおう』となって、サン・ラックスとエンディングソングについて打ち合わせを始めました」
シャイナート「それで、サン・ラックスのライアン(・ロット)が、長い時間をかけてこの映画にインスパイアされた曲を書いてくれました。さらには、僕らが大好きなミュージシャンで、脚本執筆中にインスピレーション源となっていたMitskiとコラボレーションすることになりました。そしてデイヴィッド・バーンは、僕らの成長過程でずっと聴いてきたミュージシャンです。彼らが参加してくれたことだけでも非現実的なのに、映画を観てインスパイアされた曲を作って演奏してくれるなんて、本当に不思議な感じです」
――Mitskiのお名前が出ましたが、この映画ではポスターイラストレーションがジェームズ・ジーンで、最高にすばらしいコスチュームを担当したのはLAのデザイナーのシャーリー・クラタでした。まるで旬なアジア系アメリカ人アーティストのショーケースのようです。
クワン「オーマイゴッド!言われた通りですが…でもこれは偶然なんです。アジア系やアジア系アメリカ人のクリエイターを大集合させる映画を作ろうとしたわけではないんですが、幸運にもたまたまそうなっただけです。僕らがとても誇りに思っているのは、僕が育った環境にはたくさんの奇妙で、オフビートで、クリエイティブなアジア系の人々がいて、まるでパンクバンドをやっていたような感じでした。僕は撮影係で、いつも変な服を着ていて。そして、僕らのような人々が少なくともアメリカのメディアで表象されることはありませんでした。多くの場合は、単一民族でまじめで、快活であることが重要視されていたから。だからこの映画は、それらのカテゴリーに属さない変わった人々を祝福するとても楽しい手法となったんです。
例えば、才能あふれるコスチューム・デザイナーのシャーリー・クラタはとても変わった人で、重めの髪型に大きなメガネをかけていて、写真だけ見ると漫画に出てくるスタイリストのようです。ジェームズ・ジーンは、現在活躍する中で最高のイラストレーターであることは明らかでしょう。彼のことは誰もが知っていて、すでにアジア人アーティストという枠を超えた存在です。Mitskiについては、日本でどのような活動をしているのかは知らないけれど、アメリカでは本当に尊敬されているソングライターで、僕も大好きです。ジェームズ・ホン、ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クワン、ステファニー・スー、ハリー・シャム・ジュニア、そしてスタント・コーディネーターのアンディとブライアンのリー兄弟など、あらゆる世代のアジア系クリエイターが参加してくれました。彼らによって、異なる世代のアジア系アメリカ人による、様々な視点が注入されています。彼らのような才能のすべてを映画に封じ込めることができて、とても興奮しています」