心温まるキャラを演じ続けてきた、トム・ハンクスの“ナイス・ガイ”ぶりを振り返る
一緒にいると幸せな気分になる“ナイスガイ”!…『ユー・ガット・メール』、『幸せへのまわり道』
ハンクスはロン・ハワード監督によるファンタジー・ラブストーリー『スプラッシュ』(84)などの恋愛映画にも出演しているが、初期にはロマンティック・コメディのジャンルで愛されキャラを演じている。ノーラ・エフロン監督、メグ・ライアン×ハンクスという『めぐり逢えたら』(93)のスタッフ&キャストで贈る『ユー・ガット・メール』(98)も印象的だった。
ハンクスが扮したのは、キャスリーン(ライアン)が営む老舗の小さな絵本書店のすぐ近所に出店する大型書店の御曹司ジョー。商売敵であるキャスリーンとジョーはいがみ合ってばかりいたが、実は2人はインターネットを介して匿名で親しくする仲。お互いの正体がわからないままメールをやり取りするうちに徐々に惹かれ合っていく様子がエモーショナルで、すぐ始まるであろう恋の予感にワクワクさせられた。
また、ハンクスによる“一緒にいると幸せな気分になるナイスガイ”の筆頭ともいえるのが、彼が『幸せへのまわり道』(19)で演じたアメリカの子供向け長寿番組の司会者フレッド・ロジャースだろう。公私に関わらず丁寧に人と接するなど、常に人として立派であろうとする実在の人物をいちぶの隙もなく完璧に演じきったハンクスは、アカデミー賞で助演男優賞にノミネートされている。
逆境のなか生きる道を切り拓いていく頑張り屋…『ターミナル』、『幸せの教室』
彼は無人島で孤独なサバイバル生活を送る男性を怪演した『キャスト・アウェイ』(00)が高く評価されたが、このほかにも逆境のなか生きる道を自ら切り拓いていく主人公を演じた感動作として『ターミナル』(04)や『幸せの教室』(11)を挙げる人も多いだろう。
『ターミナル』では、クーデターによって母国の政府が倒れ、渡航先だったアメリカに入国できなくなってしまうビクターに扮したハンクス。足止めをくった空港ターミナルで従業員と親交を深めていく姿は、素朴ななかにも温厚な人柄が伝わり、好感が持てた。
また、『すべてをあなたに』(96)以来のハンクスの2作目となる監督作『幸せの教室』は、大卒でないという理由で長年勤めていたホームセンターを解雇されたラリーが、地元の大学に入学して再起を図るハートフルコメディだ。ハンクスが50代のラリーを演じ、ジュリア・ロバーツが仕事の情熱を失い、家庭も崩壊寸前の美人教師に扮した。
このビクターとラリーに共通するのは、ギリギリの状況になっても希望を失わない頑張り屋ということ!どちらも周囲の人間が手を差し伸べたくなるような人物だった。