小野大輔、声優人生の歩み。フリー転身後の自身と古代進を重ねる
不朽の名作をリメイクした『宇宙戦艦ヤマト2199』の続編を劇場で上映する『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第二章「発進篇」』(6月24日劇場上映)。『宇宙戦艦ヤマト2199 』の制作スタート時から、主人公・古代進役を背負うのは声優・小野大輔。「古代は、とても自分と近い部分がある。演じることに運命的なものを感じている」という彼。第二章ではいよいよヤマトが再び発進するが、リーダーとしての覚悟を決める古代には、「フリー転身後の自身と強く重なる部分がある」と思いを馳せる。
惑星テレザートから送られてきたメッセージを受け取った古代が、地球政府の反対にあいながらも、ヤマト出航の決意をする姿を描く本作。リーダーとなり、問題に立ち向かおうとする古代だが、小野は「ただまっすぐに勇猛果敢に前に進んでいくわけではない」と古代の心境を語る。
「リーダーとして覚悟を決める瞬間がありますが、それは結果。今作で古代は、地球が一枚岩ではないことがわかり、大きな力が動いていることに気づいていくんです。それはすごく怖いことですよね。だからこそヤマトを発進させるわけですが、そこに行き着く過程で、彼は葛藤し、恐れも抱く。逡巡しながら決断する姿は、とても人間らしいなと思いました」。
恐れ、葛藤しながら前に進もうとする古代。声優人生を力強く歩むなか、2016年にフリーへと転向している小野だが、その重責や決断において、古代にとても共感できるという。「人間は生きていると、決断をしないといけない時期やタイミングが要所要所で出てくると思うんです。僕も15年役者をやってきて、いまフリーランスで活動をしていて。やはり、いろいろと決めなければいけないことが多いんです。すべての責任が自分にあるので、古代を見ていると『悩むよね』『それを決めてしまったら、あとどうなるんだろうという怖さもあるよね』と自分と照らし合わせることができる。同じ気持ちになって揺れ動くことができました」。
共感とともに、勇気ももらった。「悩んでいいんだなと思ったんです。古代には“ヒーロー”というイメージがあって、すべて即断即決で、何もかも自分の力で打開していくと思われがち。でも実はまったく違って、臆病なんです。勇気や責任感があるからこそ、臆病になるんだと思います。ただただ命知らずなのは、無責任なこと。臆病になるところがリーダーらしさだとも思うし、人間臭くてとてもいいなと思うんです」。
確かな実力と人気を兼ね備え、第一線をひた走る小野。ベテランと若手声優陣が集う『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の現場では中堅の立場、いわば“中間管理職”となる古代と同じポジションにあたる。「アフレコスタジオは艦橋のよう。僕はいつも真ん中に座るようにしています。艦長代理であり、座長なのでそこに座らなきゃなと思っています。周りはベテランの方も多いので、やはり緊張もします。みなさん作品にかける思いがきちんとありながら、肩の力が抜けているような感じもあって、いろいろと教えてくださいます。とにかくみなさんと話をするのがものすごく楽しくて。ヤマトの現場では、若手も一緒になって話をしています」。
まさにヤマトクルーのように、世代を超えてしっかりと絆を育んでいる声優陣。小野は「若手とベテランの方の間にアンカーを打ち込むような役目をしていると思っています。おこがましいようですが、僕がくさびの役割となって、ヤマトクルーがひとつになってくれたらいいなと思っています」と自らの役割について吐露。
様々な経験を積み、いまの小野だからこそ担える役柄であり、タイトルとなった。「『宇宙戦艦ヤマト2199』で、『宇宙戦艦ヤマト』という作品の大きさを痛感しました。最初は自分で大丈夫なのかなという気持ちもありました。本当に偉大な作品です。いまだにプレッシャーは感じています」とSFアニメの金字塔に挑む素直な思いを明かしつつ、「でも『宇宙戦艦ヤマト2202』をやっていると、改めて古代は『自分だな』と思うんです。こんなに古代と同じ気持ちになれるとは思っていなかったので、演者としてこの役に挑むのが本当に楽しい。演技的にはものすごく窮地に立たされますが、それも役者としては演じがいがある。ピンチやプレッシャーを楽しんでいる部分があるので、やはりそこは古代と重なるメンタリティだと思います」と心を込めるなど、章を重ねるごとにますます“運命”を感じていた。【取材・文/成田おり枝】