ハリウッド5大スタジオの注目タイトルは?活況を取り戻した映画館の今後を担う、シネマコン情報総まとめ
ディズニー100周年記念作、『M:I』『ワイスピ』『インディ・ジョーンズ』も
シネマコン3日目、3社目のプレゼンテーションはウォルト・ディズニー・スタジオ。ディズニー・エンターテインメント劇場配給担当上級副社長のトニー・チェンバースは、2023年はスタジオが100周年を迎える節目の年で、世界各国にある系列7つのスタジオのそれぞれの新作映画を公開すると発表。7つのスタジオとは、ディズニー、ピクサー、ウォルト・ディズニー・アニメーション、20世紀スタジオ、ルーカスフィルム、マーベルスタジオ、サーチライト。そのなかから、今後公開される期待作の予告編を多数上映した。まずは、11月10日北米公開予定の『The Marvels』と、11月22日公開予定の『ウィッシュ』。どちらも秋の映画シーズンの期待を背負う大作映画だ。
また、5月28日に北米公開の『リトル・マーメイド』からは、ヴィランのアースラを演じるメリッサ・マッカーシーが歌う楽曲が公開になった。そして、間も無く開幕するカンヌ国際映画際でワールドプレミアが行われる『マイ・エレメント』の冒頭20分間の映像を公開。舞台は土・火・水・風が互いを大切にしながら暮らしているファンタジックな世界、エレメント・シティ。火の街で暮らしている火のエレメントのエンバーと、流れに身を任せる水のエレメント、ウェイドが、他者とのつながりのときめきを見つけ、世界の中で自分の居場所を見つける物語だ。
サーチライト・ピクチャーズからは、タイカ・ワイティティ監督の最新作『Next Goal Wins』の新予告編が公開。低迷するサッカーチームの再起を計るコーチを、マイケル・ファスベンダーが演じる。北米公開は11月17日を予定。
『マイ・エレメント』同様に5月のカンヌ国際映画祭でプレミアが行われる『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』からは、インディ博士を演じるハリソン・フォードがビデオメッセージで登場。続いて流された特別映像では、マッツ・ミケルセンやフィービー・ウォーラー=ブリッジと共に全力疾走するハリソン・フォードの姿が公開された。6月30日(金)公開予定。
4社目のユニバーサル・ピクチャーズのプレゼンテーションのうち、クリストファー・ノーラン監督の『Oppenheimer』、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』のステージでヴィン・ディーゼルらキャスト陣が沸かせたステージについては既報の通り。現在世界中で大ヒット中の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を手掛けたイルミネーションの最新アニメーション『Migration』の新着映像が公開された。今度の作品は、アヒルの一家の冒険物語。声の出演には、クメイル・ナンジアーニ、エリザベス・バンクス、オークワフィーナ、ダニー・デヴィートらが名を連ねる。北米12月22日公開予定。そのほか、ジャック・ブラックが登壇し『カンフーパンダ』最新作をプレゼンし、ジョン・M・チュウによる名作ブロードウェイミュージカルの映画化『Wicked』の最新映像を上映。エルファバ・スロップ役のシンシア・エリヴォ、グリンダ・アップランド役のアリアナ・グランデ、フィエロ・ティゲラー役のジョナサン・ベイリー、オズの魔法使い役のジェフ・ゴールドブラム、マダム・モリブル役のミシェル・ヨー、プファニー役のボーエン・ヤンなど、キャスト名を聞いただけでも期待が募る。北米公開は少し先で、2024年11月27日を予定している。
シネマコン最終日のプレゼンテーション、パラマウント・ピクチャーズは『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』のダンスパフォーマンスから開始。なんとスタジオの重役もタートルズの扮装で登場するというサービスぶりで、続いて登壇したセス・ローゲンにいじり倒されていた。5歳のころからタートルズのファンで、8歳の誕生日に父親にヌンチャクを買ってもらったというローゲンが声の出演を果たした『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』は、8月25日(金)日本公開。
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の前日譚となる『A Quiet Place: Day One』の制作も発表された。オリジナル版のジョン・クラシンスキー監督は今作ではなく、『IF』(2024年5月24日北米公開予定)の監督を務める。パラマウント・ピクチャーズの目玉作品は、7月21日に公開される『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新作、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』。約20分の未公開フッテージが上映されると、会場は大きな歓声に包まれた。
最後のプレゼンテーションとなったライオンズゲートは『The Hunger Games: The Ballad of Songs and Snakes』『Saw X』といった過去のヒット作の続編の特報に加え、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のジョイ役ステファニー・スーと、Netflixオリジナルシリーズ『エミリー、パリへ行く』のミンディ役アシュレー・パークらオール・アジアキャスト&スタッフのR指定コメディ『JOY RIDE』の特別試写を実施。3月のサウスバイ・サウスウエストで上映され大人気を博した作品で、アジア系米国人の彼女たちがパワー全開でコメディに挑む。今作の日本公開は未定だが、7月7日に北米で公開になると、大きな話題になることだろう。
今年のシネマコンでは、ハリウッド5大スタジオのプレゼンテーションが行われ、パンデミック後ようやく盛況を取り戻した映画館の復活を祝うようなコンベンションだった。だが、これらの新作映画は撮影終了もしくはすでに開始されている作品で、現在ハリウッドで行われている脚本家ストライキ以前に執筆が完了しているもの。今年は各スタジオお祭りモードでプレゼンテーションを行っていたが、脚本家協会と映画製作者協会(AMPTP)間の交渉が成立しない限り、来年、再来年の見通しに関しては未知となる。また、発表された作品に人気作・ヒット作の続編が多いことも気がかりだ。ハリウッドと映画興行が本当に健全さを取り戻すのは、まだ時間がかかるかもしれない。
文/平井伊都子