ペ・ドゥナ主演、実在の事件を描く映画『あしたの少女』日本公開決定、ポスタービジュアルも解禁|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
ペ・ドゥナ主演、実在の事件を描く映画『あしたの少女』日本公開決定、ポスタービジュアルも解禁

映画ニュース

ペ・ドゥナ主演、実在の事件を描く映画『あしたの少女』日本公開決定、ポスタービジュアルも解禁

2022年、韓国映画として初めてカンヌ国際映画祭批評家週間の閉幕作品に選ばれ、同年の第23回東京フィルメックスでの審査員特別賞のほか、多数の国際映画祭で賞を受賞をはたした話題作『あしたの少女』が8月25日(金)より日本公開されることが決定。あわせてポスタービジュアルも解禁となった。

【写真を見る】ペ・ドゥナとともに主演を務めたのは注目の新進女優、キム・シウン
【写真を見る】ペ・ドゥナとともに主演を務めたのは注目の新進女優、キム・シウン[c]2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.

2017年に韓国で実際に起こった事件をモチーフにした本作を手掛けたのは、『私の少女』(14)のチョン・ジュリ監督。高校生のソヒは、大手通信会社の下請けのコールセンター運営会社で実習生として働き始めるが、会社は顧客の解約を阻止するために従業員同士の競争をあおり、契約書で保証された成果給も支払おうとしない。ある日、指導役の若い男性チーム長が自殺したことにショックを受けたソヒは、自らも孤立して神経をすり減らしていく。やがて真冬の貯水池でソヒの遺体が発見され、捜査を担当する刑事ユジンは、彼女を自死へと追いやった会社の労働環境を調べ、いくつもの根深い問題をはらんだ真実に迫っていく

ペ・ドゥナが演じるのは、事件の捜査を担当する刑事ユジン
ペ・ドゥナが演じるのは、事件の捜査を担当する刑事ユジン[c]2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.

本作は2部構成となっており、ソヒが主人公となる前半のパートでは、実際の事件を忠実に再現。もう1人の主人公、刑事ユジンが登場する後半は、チョン監督の創作で、韓国の労働問題を追及してきたジャーナリストらに触発されて、ユジンのキャラクターを構築した。事件の真相究明に執念を燃やすユジンに扮するのは、日本映画やハリウッド映画でも活躍し、是枝裕和監督作品『ベイビー・ブローカー』(22)も記憶に新しいペ・ドゥナ。前作『私の少女』でもタッグを組んだチョン監督は、当初からドゥナの起用を想定して脚本を執筆したという。一方、ソヒ役にはフレッシュな新進女優キム・シウンが抜擢された。

ユジンは、ソヒを自死へと追いやった会社の労働環境を調べていく
ユジンは、ソヒを自死へと追いやった会社の労働環境を調べていく[c]2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.

今回、解禁されたポスタービジュアルは、輪郭はもちろん、その表情も視線もはっきりとしないユジンの姿と、その奥で、まっすぐこちらを見つめる主人公ソヒの憂いある眼差しを捉えたものとなっており「あなたの見えない眼差しを私は見ている」というキャッチコピーが添えられている。“あなた”と“私”。それらが、“ソヒ”と“ユジン”のどちらを指しているかの捉え方によって、意味合いが異なるコピーとなっている。

無垢な青少年を消耗品のようにこき使う企業の実態をあぶりだした本作は、日本よりもはるかに競争が厳しいと言われる韓国の社会システムの歪みをも告発する。一つの事件を2つの視点で描くという着想がユニークだが、ユジンがソヒの足取りを追体験していく捜査のプロセスは、2つの異なる時間軸が共鳴するような感覚をも観る者にもたらす。それを象徴したある印象的なシーンの“光”をモチーフにした演出は、観客それぞれの想像力を刺激せずにはいられない。

無垢な青少年を消耗品のようにこき使う企業の実態があぶり出されていく
無垢な青少年を消耗品のようにこき使う企業の実態があぶり出されていく[c]2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.

なぜ、ごく普通の高校生が自死を選ばなくてはならなかったのか。どうして、周囲の大人たちは救いの手を差し伸べなかったのか。社会のいまを鋭く見すえ、これらの問いを投げかける本作は、英語題の『Next Sohee(次のソヒ)』が示す通り、ソヒのような犠牲者を二度と生みだすべきではないという願いをこめて作られた。ソヒの“生きた証”がスクリーンに映しだされるエンディングは、この映画にきらめくかすかな希望として、あらゆる観客の胸を打つに違いない。公開はしばらく先なので、今後の続報もチェックしていただきたい。


文/山崎伸子

作品情報へ