岡田准一主演『最後まで行く』国境を越えてリメイクされる“韓国“映画の持つコンテンツ力

コラム

岡田准一主演『最後まで行く』国境を越えてリメイクされる“韓国“映画の持つコンテンツ力

仕事も家庭もうまくいかない刑事が絶体絶命の危機に追い詰められていく姿をスリリングな展開で見せる『最後まで行く』が5月19日より公開中だ。岡田准一と綾野剛というパワフルな2人が一歩も引かない対決を見せるこの映画は同名の韓国映画のリメイク。人物の背景をより掘り下げた日本版を紹介すると共に、世界各国の映画人を引き付ける韓国映画の魅力を探っていきたい。

岡田准一を主演に迎えたリメイク版『最後まで行く』

岡田准一と綾野剛が劇中で壮絶な攻防戦を繰り広げる『最後まで行く』
岡田准一と綾野剛が劇中で壮絶な攻防戦を繰り広げる『最後まで行く』[c] 2023映画「最後まで行く」製作委員会

激しく降りしきる雨の中、車を飛ばしている刑事の工藤祐司(岡田准一)。母親が危篤との連絡を受け、病院に向かっていた彼の元に「署内で裏金が作られていると告発が入った」との電話がかかる。動揺しながらも運転を続けていた工藤だったが、いきなり暗闇から飛び出してきた男を轢いてしまう。車を降り、男が死んでいることを確認した工藤は彼をトランクへ隠し病院へ。その後、母が息を引き取り、斎場へ移動した工藤は先ほどの男の遺体を処理する驚きの方法を思いつく。一方、県警本部の監察官、矢崎貴之(綾野剛)はある理由から行方を探していた男の遺体を工藤が隠していると気づき、彼を脅迫し始める。

リメイクの元となった、イ・ソンギュン主演のサスペンス・アクション『最後まで行く』
リメイクの元となった、イ・ソンギュン主演のサスペンス・アクション『最後まで行く』発売中 DVD 価格:3,800円 発売・販売元:アルバトロス株式会社[c] 2014 SHOWBOX/MEDIAPLEX AND AD406 ALL RIGHTS RESERVED.

キム・ソンフン監督が手掛け、『パラサイト 半地下の家族』(20)のイ・ソンギュンが主演したオリジナル版の『最後まで行く』(15)。封切り前にはそれほど話題を集めていた映画ではなかったが、奇想天外な設定と驚きのストーリーが口コミで広がり、韓国でスマッシュヒットとなった。リメイク版では、問題を抱えた警官が予想もしなかったアクシデントに巻き込まれていく基本的な流れを踏襲しつつ、広末涼子演じる工藤の別居中の妻や敵役となる矢崎の家族などを新たに登場させ、中心人物たちを取り巻くドラマがより丁寧に描かれている。イ・ソンギュンと岡田准一という俳優たちの個性を反映してか、オリジナル版にあったユーモアも抑え目になっている。

世界各地でリメイクされるダイナミックな韓国アクション

フランス版『最後まで行く』ではフランク・ガスタンビドゥが主人公の汚職警官を演じた(『レストレス』)
フランス版『最後まで行く』ではフランク・ガスタンビドゥが主人公の汚職警官を演じた(『レストレス』)[c]Everett Collection/AFLO

『最後まで行く』の見どころでもある、予想を裏切りながら観客をひきつける展開とダイナミックなアクションは韓国映画の大きな魅力の一つ。その力強さを生かしたリメイク作品も多い。例えば『最後まで行く』は日本以外に『レストレス』(22)というタイトルのフランス版が作られている。そのほか、生放送中のラジオ番組に脅迫電話がかかってくる『テロ、ライブ』(14)のインド版『ダマカ:テロ独占生中継』(21)、未解決の連続殺人事件の犯人だと名乗る男が自叙伝を出版して世間を驚かす『殺人の告白』(13)を藤原竜也主演でリメイクした『22年目の告白―私が殺人犯です―』(17)、目の見えない女性が事件の目撃者となる『ブラインド』(14)の日本版『見えない目撃者』(19)なども、こうした系譜に入るだろう。さらにハリウッドでも、疾走する特急列車の中でゾンビたちが増殖していく『新感染 ファイナル・エクスプレス』(17)のリメイク版が『ラスト・トレイン・トゥ・ニューヨーク』のタイトルで制作中だ。

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