岡田准一主演『最後まで行く』国境を越えてリメイクされる“韓国“映画の持つコンテンツ力
友情、恋愛と人々の心を繊細に描き出す韓国の人間ドラマ
涙と笑いを絶妙にブレンドしたヒューマンドラマも韓国映画の得意分野だ。その筆頭が40代女性たちの友情が過去と現在を行き来しながら描かれる『サニー 永遠の仲間たち』(12)。日本版の『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(18)では過去の時代背景を80年代から90年代へと移し、なつかしい音楽が散りばめられた。また、70代の女性が不思議な力で若返る『怪しい彼女』(14)は多部未華子主演の『あやしい彼女』(16)のほか、中国版の『20歳よ、もう一度』(15)、ベトナム版『ベトナムの怪しい彼女』(16)と各国でリメイクされている。さらに、期間限定の恋を描く『八月のクリスマス』(99)の日本版『8月のクリスマス』(05)やチャップリンの名作『街の灯』(34)をモチーフにした『ただ君だけ』(12)のリメイク『きみの瞳(め)が問いかけている』(20)など、ロマンティックな韓国発のラブストーリーも、日本らしいアレンジを加えて再誕生している。
漫画、映画、そして小説…韓国でも愛される日本のコンテンツの数々
一方、クスリと笑えるコメディやリアリティに根付いたラブストーリーは日本映画ならではのジャンルとして韓国でもよく知られている。売れない俳優と殺し屋の人生が入れ替わる『鍵泥棒のメソッド』(12)が『LUCK-KEY/ラッキー』(17)になったり、韓国で多くのファンを持つ『ジョゼと虎と魚たち』(03)が2020年に同名タイトルでリメイクされたりしているのは、そうした認識を反映している。また、伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』(19)や村上春樹の短編「納屋を焼く」を元にした『バーニング 劇場版』(19)、佐々木譲の『警官の血』(22)など、人気の高い日本の小説を原作にした映画はジャンルを問わず数多く作られている。日本のマンガを原作としたパク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』(04)が世界的に評価されハリウッドでリメイク版『オールド・ボーイ』(14)が作られるという例があったように、力のあるコンテンツは国境を軽々と越えながら独自の魅力を付け加えていく。韓国と日本のコンテンツもますまる相乗効果を上げながら、よりおもしろい作品を生み出していくことだろう。
得体の知れない相手からの脅迫の中で予想もしなかった結末にたどり着くオリジナル版にさらなるひねりを加え、新たに生まれ変わった『最後まで行く』。不運の中でも生きることをあきらめない刑事、工藤の命がけの奮闘をお見逃しなく。
文/佐藤 結