天才漫画家・岸辺露伴とは何者なのか?荒木飛呂彦が”理想の漫画家像”を込めた「ジョジョ」屈指の人気キャラクターに迫る

コラム

天才漫画家・岸辺露伴とは何者なのか?荒木飛呂彦が”理想の漫画家像”を込めた「ジョジョ」屈指の人気キャラクターに迫る

フランスで発行された読み切りが映画化!

もちろん、担当編集の泉京香も共にルーヴルへ
もちろん、担当編集の泉京香も共にルーヴルへ[c]2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 [c]LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

このたび公開された『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、2009年にフランス、ルーヴル美術館のバンド・デシネ(フランス語圏で出版されるマンガ)プロジェクトのために描き下ろされた荒木飛呂彦初となるフルカラーの読み切り作品を原作とした映画。2010年にフランスで刊行され、日本語版はその翌年に刊行された。日本の漫画家がフランスでバンド・デシネの単行本を刊行するというのはかなり異例で、2009年にルーヴル美術館で「ジョジョ」の原画展が開催されるなど、荒木が海外でも高い人気を博するアーティストであるからこそ実現した作品だ。

露伴の過去に大きな関わりを持つ奈々瀬
露伴の過去に大きな関わりを持つ奈々瀬[c]2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 [c]LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

特殊能力を持つ漫画家の岸辺露伴は、新作を執筆する過程で、青年時代(17歳の露伴:長尾謙杜)に淡い思いを抱いた女性、奈々瀬(木村文乃)から聞いた、この世で最も「黒い絵」のことを思いだす。現在、その絵がルーヴル美術館に保管されていることを知った彼は、取材とかつてのかすかな慕情のために、泉京香とパリへ向かう。ルーヴル美術館に到着した露伴と泉は、美術館職員のエマ・野口(美波)の案内のもと、「黒い絵」の取材を進めるが、その先には「黒い絵」に秘められた想像を絶する真相が待ち受けていた。

岸辺露伴が“黒い絵”の謎を追ってルーヴル美術館へ!
岸辺露伴が“黒い絵”の謎を追ってルーヴル美術館へ![c]2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 [c]LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

ルーヴル美術館をはじめ、シャンゼリゼ通り、エトワール凱旋門など、パリの様々な名所のなかに、自然に溶け込む露伴と泉の姿にワクワクさせられつつも、「岸辺露伴は動かない」特有の、どこかクラシカルで重厚なムードが漂う怪異世界の怖ろしさは本作でも健在。漫画家デビュー間もない若き日の露伴と新たなヒロイン、奈々瀬とのなれ初めも見どころだ。初々しく、ナイーヴだった17歳の自分を思いだす露伴の、いつになくセンチメンタルな表情にドキドキしてしまう。「岸辺露伴」シリーズの独立したエピソードでありながら、「ジョジョ」本編を貫くテーマ、血脈、運命、過去から未来へと続く時の流れを描いた物語のスケール感もまた映画版にふさわしい。


リアリティと非現実、あの世とこの世の狭間をゆらぎながら、観る者の心を捉えていく「岸辺露伴」独自の世界観。映像化されていないエピソードはほかにもたくさんあり、原作シリーズは読み切り作品として続いている。作品ごとに新しい面を見せてくれる露伴だけに、これからも彼の活躍から目を離せそうにない。

文/石塚圭子

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