『リトル・マーメイド』で軽快なラップ披露のオークワフィナ、俳優&ラッパーとしてのキャリアを振り返り
今年創立100周年を迎えるウォルト・ディズニーが放つ、名作アニメーションを実写化したミュージカル映画『リトル・マーメイド』が6月9日に公開され、公開3日間で興行収入7億1180万円、46万1131人を動員し、興行ランキング初登場第1位の大ヒットスタートを記録した。本作で目立ちたがり屋のカツオドリ、スカットル役を演じたオークワフィナが「自分にとって、初期のキャリアにオマージュを捧げるような気持ちで演じました」と語るキャラクターの魅力から、話題作への出演が続く彼女の軌跡をおさらいしていこう。
海の王女アリエル(ハリー・ベイリー)は、嵐に遭った王子エリック(ジョナ・ハウアー=キング)を救ったことをきっかけに、まだ見ぬ人間の世界への好奇心を膨らませる。人間の世界に飛びだしたいという気持ちが抑えきれなくなった彼女は、海の魔女アースラ(メリッサ・マッカーシー)のもとへ行き、美しい声と引き換えに、3日間だけ人間の姿に変えてもらうという取引に応じてしまう。
「パート・オブ・ユア・ワールド」をはじめとする名曲や、天真爛漫なアリエルの可愛さが人気の『リトル・マーメイド』だが、脇を固めるキャラクターたちも本作の魅力となっている。アリエルの幼馴染で親友のフランダー(声:ジェイコブ・トレンブレイ)は、彼女の「人間の世界に行きたい」という悩みを打ち明けられる唯一の相手で、アリエルの心情を引きだすうえで重要なポジションを担う。海の王トリトンに仕える執事長のセバスチャン(声:ダヴィード・ディグス)は、まじめで責任感が強いがアリエルを大切に想い、物語の狂言回しのような役割も務める。なかでも実写化にあたり魅力をパワーアップさせたのが、陽気で騒がしいスカットルだ。海と陸を行き来できる情報通のスカットルは、アリエルに人間の世界について教え、フランダー、セバスチャンと共にドタバタの冒険を繰り広げる。
コミカルながらも物語にスパイスを加える存在のスカットル役には、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(21)のオークワフィナが抜擢された。『オーシャンズ8』(18)で存在感を放ったオークワフィナは、続く『クレイジー・リッチ!』(18)で大ブレイク。実力派女優として着実にステップアップしてきたが、実はキャリアのスタートとなったのは、YouTubeで配信した「My Vag」というラップミュージックだった。再生回数700万回を超えるこの楽曲によって、その才能が注目されたオークワフィナは、そこでハリウッドへの扉を開けることができた。ほかにも多数のラップミュージックを投稿していた彼女は、現在も女優だけでなくラッパーやコメディアンとしてマルチに活躍を続ける。
そんなオークワフィナにとって、早口で話をまくし立て、軽快なラップミュージックで物語を加速させるスカットル役を演じることは、まさに運命だった。オークワフィナは役のオファーを受けた当時を振り返り「すごくクールです。こんなことは予測していませんでした。ミュージシャンとしても、女優としても、こんなコラボレーションができることがすごくうれしいです。才能豊かな人たちに囲まれて、自分ができることをやらせてもらうチャンスをいただけたのです。声の演技をしつつ、初期のキャリアにオマージュを捧げるようなことができるなんてとてもすてきなことです」と、トップ女優として脚光を浴びているいまだからこそ、自身の原点に戻れるようなスカットル役を演じることへの喜びを語っていた。
オークワフィナのラッパーとしての実力は共演者からもお墨付き。本作の音楽を務めるリン=マニュエル・ミランダと共にラップのクルーも組むセバスチャン役のディグスは「スカットルとセバスチャンは、即興もたくさんやります。オークワフィナはそれぞれのテイクでいろいろな違うことをやってみせました。彼女が即興でやったもののどれが使われたのか、観るのが楽しみです!」と、場面に応じてラップを披露したオークワフィナの実力を認めていた。
一流の音楽家からも高い期待を寄せられたオークワフィナ演じるスカットルが、どのように物語を彩ったのか、映画館で確認してみてほしい。
文/山崎伸子