橋本愛が明かした“理想のヒーロー像”「そんな自分になれることを目指しています」
「役作りの核の部分は同じでも、表現としてはまったく別のものとして演じました」
橋本にとって初めての洋画の吹替え作品。役作りは普段演じるのと同じように行ったという。「カーラという人物の根幹を自分のなかに作る行程からたどり、そのうえで役を演じたカジェさんの表情や声から伝わってきたものを声に乗せました」。カジェの声の印象を尋ねると、低い声域で魅力な声だったと回顧。「力強さがあってかっこよかったですね。でもそれだけでなく、繊細さや優しさ、温かさも表現していたんです。そんな彼女の演技に寄り添うよう心掛けました」。ただしカーラの役柄はミステリアスな部分も多いだけに、想像力で補完した部分もあったという。「彼女が惑星クリプトンを離れ、故郷の崩壊を目の当たりにした時、どんな気持ちになったんだろうと思うんです。家族や故郷と引き裂かれるのは、想像もつかないくらい壮絶な体験じゃないですか。その体験が彼女の行動の原動力につながっていると考えました」。
吹替え収録については「マイクから離れちゃいけないし、リップシンクやタイムコードなど制約があるなかでの表現は、新鮮で楽しかった」と振り返る。バトルシーンでは絶叫にも挑戦した。「『うおー!』とか『うわ!あああー』と叫ぶんですが、すごく楽しかったです」。そのなかで、アクセントの置き方を特に心掛けたそう。「セリフのどこにアクセントを置くべきか。例えば“わ”が少し“あ”に聞こえたので、そこを意識して発音したり。普段演じるなかではあまり意識しない部分だったので、そこが少し難しかったです」。ヒーロー役ということで強さを印象づけるために気をつけた点もあったという。「カーラはすごくかっこいい女性なので、声色に色っぽさが乗らないようニュアンスも意識していました」。そんな橋本の声質にアンディ・ムスキエティ監督は「声質やトーンを聞いた瞬間に役にピタリとハマった」と太鼓判を押した。「オーディションの声をアンディ監督がすごく喜んでくださったと聞いたので、この路線でもっと磨き上げていこうと思いました」。
テレビアニメ「なつなぐ!」では主演、映画『僕が愛したすべての君へ』(22)ではヒロインを演じるなど、アニメーションでは声優としてキャリアを重ねてきた橋本。「初めての時は、声だけのお芝居独特の抑揚を意識していませんでした。役に入れば自然に波ができると思っていたら、ほかの声優さんの演技に比べ自分の声がすごくフラットに聴こえてしまって…。そのことで声のお芝居の時は伝える濃度を少し高めることが必要だと学びました。そんな経験値がちょっとずつ自分のなかに積み重なっていると思います」。アニメーションでの経験は、吹替えの演技にもプラスに作用したという。「吹替えも、普段演じる時と同じでは通用しないと思って臨んだんです。役作りの核の部分は同じでも、表現としてはまったく別のものとして演じました」とアプローチを明かしてくれた。