「ジャンゴ」たちが集結!クエンティン・タランティーノも惚れたマカロニ・ウエスタンの唯一無二性をひも解く
登場人物たちの愛憎が渦巻くロシア文学的大河ロマン・ウエスタン「ジャンゴ ザ・シリーズ」
オリジナル版から半世紀以上を経て誕生したテレビシリーズ「ジャンゴ ザ・シリーズ」は、荒野の“火口”の中の町ニュー・バビロンを舞台に、流れ者ジャンゴ(マティアス・スーナールツ)と黒人たちのユートピアを作ろうとしているジョン(ニコラス・ピノック)、ジョンの若妻サラ(リサ・ヴィカリ)に加えて、近くの町を牛耳るエリザベス(ノオミ・ラパス)の間の愛憎と銃撃戦を描くマカロニや西部劇を越えたロシア文学的大河ロマン・ウエスタンだ。本作はコルブッチに捧げられているうえ、(オリジナル版の)脚本家や作曲家などメインスタッフ名も毎回クレジットされる。
ニュー・バビロンの町が撮影されたのは、ルーマニアにあるラコシュ火山のクレーター。いままでの映像作品で見たことがない異様なロケーションというしかないが、現地では人気の観光スポットとのことで、撮影のために長期間にわたって閉鎖されたという。そもそも1950年代末に喜劇映画で名を挙げたコルブッチが初めて撮った西部劇『グランド・キャニオンの大虐殺』(63)は旧ユーゴスラヴィアで撮影されていた。ジャンゴが、先祖返りして東ヨーロッパ(しかも吸血鬼の本家)で撮影されたのも、ジャンゴを演じたスーナールツが、あの名ギタリスト、ジャンゴと同じベルギー出身なのもすべて用意された必然だったのかもしれない。
オリジナル版の要素を引継ぎながら現代にも通じる物語として構成
全10話によるこのテレビシリーズは、“妻を亡くした元南軍兵の流れ者”という、すでにオリジナル版でほのめかされた設定を引き継ぎつつ、エピソードを重ねるにつれて、さらに突っ込んだ人物造形を施された主人公ジャンゴの正体が明らかになっていく。
もちろん、コルブッチが好んだ“強い女”や“ハンディをもつ”キャラクターは忘れていない。指にハンディのあるギタリストではないが、盲目の音楽家が登場する。さらに、砦のような町は『スペシャリスト』(70)、木製の塔は『リンゴ・キッド』(66)、ネイティヴ・アメリカン狩りは『さすらいのガンマン』(66)など、コルブッチ作品を彷彿とさせる描写はもちろん、『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』を思わせる南北戦争場面や『荒野の用心棒』に登場した炎を背景に射ちまくる黒いドレスの女など、マカロニ・ウエスタンの数々の名作を思いださせる名シーンが目白押し。棺桶や、あの“強力な武器”もしっかり登場する。極めつけは、ジャンゴを支える存在として『ジャンゴ 繋がれざる者』同様、特別出演する元祖ジャンゴ=フランコ・ネロ!見逃し厳禁だ。
物語の根底には、タランティーノ「ジャンゴ」を受け継ぐ反人種差別=自由平等主義に加えてヨーロッパ的なユートピア志向、さらにはアッと驚く、ある名作ハリウッド西部劇(アカデミー賞監督&脚本賞を受賞)への目配せなど、21世紀にマカロニ・ウエスタンを復活させるにふさわしい多様なアイデア、多彩な個性と意外性が詰め込まれている。
【スターチャンネル 放送情報】
■「ジャンゴ ザ・シリーズ」
[STAR1 字幕版]毎週火曜日23:00~ほか
[STAR3 吹替版]毎週木曜日22:00~ほか
■『続・荒野の用心棒』
[STAR2 字幕版]
7月1日(土) 14:30~
7月10日(月) 21:00~
■『ジャンゴ 繋がれざる者』
[STAR2 字幕版]
7月1日(土) 16:20~
7月9日(日) 21:00~
■『復讐のジャンゴ・岩山の決闘』
[STAR2 字幕版]
7月1日(土) 19:20~
7月11日(火) 21:00~
「ジャンゴ ザ・シリーズ」放送記念 特集:ジャンゴたち!PART 1