絶対に関わりたくない…迷惑系配信者が悪運とラップで怪奇現象に挑む!
『パラノーマル・アクティビティ』(07)や『ゲット・アウト』(17)、『M3GAN/ミーガン』(公開中)など、時代にマッチした恐怖を放ちつづけるジェイソン・ブラム率いるブラムハウス・プロダクション。コロナ・パンデミックを背景にした新たな恐怖を描いたホラー映画『DASHCAM ダッシュカム』(公開中)が日本に上陸した。
ロサンゼルスのコロナ規制にうんざりして、イギリスに住む昔の音楽仲間のストレッチを訪ねた女性ラッパーのアニー。迷惑系ライブ配信者として人気を得ている彼女は、配達員として生計を立てるストレッチから迷惑がられ、彼の恋人にも拒絶され追い出されてしまう。頭に来たアニーはストレッチの車とスマホを盗み、ライブ配信をしながらストレッチの仕事をなりすます。ところが向かったレストランで、店のオーナーから大金と引き換えに奇妙な配達依頼を受け、想像を絶する恐怖に直面することに。
メガホンをとったのは、「Zoom」を使って交霊会を行う若者たちに降りかかる恐怖を描いた『ズーム/見えない参加者』(20)をフルリモートで制作したことで一躍注目を集めたロブ・サヴェッジ監督。本作の後に手掛けたスティーヴン・キング原作の『ブギーマン』(8月18日公開)が全米でヒットを記録し、スコット・スナイダーのコミック「Night of the Ghoul」の映画化の監督にも抜擢されている、いまホラー映画界でもっとも期待される監督の一人だ。
そんなサヴェッジ監督が本作で挑んだのは、主人公が体験する恐怖を“ライブ配信”として見せるという手法。すべてパソコンの画面内で繰り広げられた『ズーム/見えない参加者』よりも空間が限られたスマホの画面は横型や縦型に切り替わり、傍らには視聴者からのコメントも。まるでライブ配信を観ている視聴者の目線で、リアルタイムに恐怖を目撃しているかのような気分を味わえることだろう。
主人公のアニー役を演じるのは、シンガーソングライター兼俳優として活動し、イギリスの音楽雑誌NMEが“音楽界のイケてる人物50人”を選出する「クール・リスト」にも選ばれたことがあるアニー・ハーディ。作中に登場するライブ配信番組「Band Car」は、実際にハーディがホストを務めていたストリーミングのスタイルをそのまま採用したもの。そうした現実とフィクションが入り混じったメタ的な構造が、本作のスリルをより駆り立てていく。
また共演には、ドラマシリーズ「ウィロー」で囚人ボーマン役を演じて好評を博したアマル・チャーダ=パテルをはじめ、これが演技初挑戦で本業はピラティスのインストラクターをしているというアンジェラ・エナホロ、さらにセイラン・バクスターやジェマ・ムーア、ジェームズ・スワントン、キャロライン・ウォードといった『ズーム/見えない参加者』の出演者たちもサヴェッジ監督作と再タッグを組む。
話題作がひしめき合った2021年のトロント国際映画祭でプレミア上映され、あまりに強烈で悪趣味な仕上がりに賛否両論を巻き起こした本作。新時代のPOVホラーの旗手とブラムハウスが仕掛ける得体の知れない恐怖の正体とは。わずか80分で一気に駆け抜ける斬新なぶっ飛びホラーを、スクリーンで体験しよう!
文/久保田 和馬