『東京喰種』「みなと商事コインランドリー」…話題作で実力を重ねていく超特急の歩み

コラム

『東京喰種』「みなと商事コインランドリー」…話題作で実力を重ねていく超特急の歩み

普段見られない姿を堪能できる…松尾太陽『一週間フレンズ。』、「花にけだもの」

7号車タカシとしてボーカルの一人を担う松尾は、特に2016年から2017年に俳優活動に熱を入れていた。川口春奈、山崎賢人のW主演で、一週間で記憶を失くしてしまう少女、藤宮香織(川口)と、彼女に惹かれ交流を重ねていく長谷祐樹(山崎)のせつない恋愛を描いた『一週間フレンズ。』(17)では、祐樹の親友、桐生将吾に扮した。桐生は、普段の松尾とはかなり異なるヤンチャな雰囲気のビジュアルかつ、ローテンションだが思ったことをハッキリ言う性格。しかし、祐樹や香織を大切に思い、様々なアドバイスを行ったり、授業中は寝ているにもかかわらず成績が良かったり、思わず桐生にキュンとしてしまった人も少なくないだろう。

桐生と同様、あまりしゃべらずどこかミステリアスな雰囲気を漂わせるキャラクターに扮したのが、連続ドラマ「花にけだもの」。中村ゆりか、杉野遥亮、甲斐翔真、入山杏奈らが名を連ね、女性に積極的なイケメン男子たちが主人公の久実(中村)をめぐり物語を繰り広げる青春恋愛ドラマだ。松尾が演じたのは、和泉千隼という、掴みどころのない無口なクール男子。本作のキャラクターは全員動物に関する名前が付いており、隼=ハヤブサと付く千隼は一見肉食系の印象を受けるのだが、久実に惹かれていながらもそっと彼女の恋愛模様を見守るという、肉食とは真逆と言っていい行動を見せる。これには観ているこちらがときめかざるを得ない。桐生も千隼も、松尾とはイメージの違うキャラクターであったが、普段見られない姿を楽しめるのも、やはり俳優業ならではだ。

明るさと憂いのギャップで魅せる…高松アロハ「4月の東京は…」

敏腕アートディレクターとしてチームを率いる蓮(「4月の東京は…」)
敏腕アートディレクターとしてチームを率いる蓮(「4月の東京は…」)[c]「4月の東京は…」製作委員会・MBS

昨年の8月より新たに超特急に加わった高松。加入前の1年程度は俳優業に専念していたといい、『HIGH&LOW THE WORST X』(22)や、舞台「スケートリーディング☆スターズ」などに出演、加入後もドラマ「君との朝食は決めている」に小笠原と共に出演するなど、演技にも前向きな姿勢を見せている。

そんな彼は、累計発行部数30万部超えの人気BLコミックを実写化した連続ドラマ「4月の東京は…」で、櫻井佑樹と共にW主演を務めている。高松が演じるのは、ある秘密を抱えるアートディレクターの石原蓮。初恋の相手である滝沢和真(櫻井)と10年ぶりに再会するが、心躍らせる和真をよそにどこか距離を取ろうとする蓮を丁寧に演じている。人から好かれる明るい性格ながら、ふとした瞬間憂いを纏わせる蓮の二面性を、めくるめく変化する表情で体現し、観ているこちらに緊張感を与えてくれる。

役者陣以外にもスポットが当たる…『サイドライン』、「FAKE MOTION」

ももいろクローバーZの『幕が上がる』(15)、まもなく公開でGENERATIONS出演の『ミンナのウタ』(8月11日公開)など、音楽グループのメンバー全員を主演にした映画が作られることは少なくないが、超特急も2015年に主演映画が作られている。それが『サイドライン』(15)だ。神社のある小さな田舎町に住み、将来について様々な葛藤を抱える7人の幼なじみたちが、ある一人の少女との出会いを通じ自分と向き合っていく姿を描いた青春群像劇で、劇作家や演出家として活動する福山桜子が監督&脚本を務めている。物語は福山による当て書きになっており、演技経験のまだまだ少ないメンバーも多かったなか、本人たちが内に秘める夢への貪欲さが、登場キャラクターたちのジレンマに説得力を与えていたのが印象的だ。

とりわけ、実家の家業を継ぐべきか、夢に進むべきかで苦悩する貴章(ユーキ)が母親に放った「(夢を)諦めろって言うんだったらどうやって諦めるか教えてくれよ!」というセリフは、彼を演じたユーキの普段の雰囲気にも通ずる熱さがあり、あまりにまっすぐな切実さに何度も何度もセリフが脳内をこだまする。

超特急だけでなく、佐野勇斗、北村匠海、森崎ウィンと、元メンバーも含めたEBiDANメンバーが総出演という形で制作された連続ドラマ「FAKE MOTION - 卓球の王将 -」もぜひ観てほしい作品だ。卓球の強さがカーストを決める20XX年の東京で、そんな時代を終わらせるべく立ち上がった一人の高校生と、その仲間たちの戦いがアツく描かれている。EBiDAN各グループのメンバーがシャッフルで様々な学校に配置されているが、そのなかで超特急は唯一、全員同じ薩川大学付属渋谷高校という、いわばラスボスである最強校を演じた。

恵比寿長門学園2年の高杉律(佐野)と、同じく2年でエースの桂光太郎(古川毅)の成長譚が物語の軸となっていたが、北村演じる恵比寿長門学園部長の松陰久志(北村)と、渋谷高校部長の島津晃(小笠原)も“もう一組の主人公”だと言ってよいだろう。2人の、切っても切れない歪みすら孕んだ関係性が、卓球がすべてであるこの世界の発端となっている。松陰と島津の関係や、チーム内で数人が持つ特殊能力=ギフテッドの発現のきっかけ、各学校にあるドラマは、想像以上に濃厚なもので、一度観たら心を掴まれ「FAKE MOTION」から逃れられなくなる。

ますます進化していく超特急に乗り遅れないで!

着実に出演作を重ね、実力を身につけていく超特急の役者陣。まだまだ期待の余地があるし、現時点で俳優活動の少ないメンバーも、もしかしたら思いもよらないような役柄を演じてくれるかもしれない。彼らの本拠地である音楽シーンでも、そして俳優業でも、彼らの唯一無二のきらめきが多くの人たちにも届く日が待ち遠しい。

文/佐藤来海


※高松アロハの「高」は「はしごだか」が、山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

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