“驚き”の連続だった宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』をレビュー!同名小説との関係とは?
名だたるスタジオが総出でレジェンド宮崎駿監督作を支援
実にアメイジングな超大作となった『君たちはどう生きるか』だが、個人的にはエンドクレジットを見ているだけで、涙腺を刺激された。いわば本作は、名だたるアニメーション映画の制作スタジオがこぞって参加した最強タッグによって生まれた作品だったから。宮崎監督といえば、漫画界における手塚治虫のような“神”に近い存在だろうから無理もない。アニメ業界にいる人なら、レジェンド宮崎駿の作品に携わりたいと思わないほうがウソ。でも、それは少数精鋭部隊ではなく、ここまでの“多数精鋭部隊”だったとは!
そういう意味では、ジブリ作品にずっと関わってきた宣伝スタッフのいるチームも含め、全員が総出で、宮崎監督作をサポートしていたことを、クレジットが雄弁に語っていた。
では、本作は宮崎アニメとしてどう位置づけの映画になったのか。正直、単に集大成とひと言で言い切ってしまうのも居心地が悪い。もっとみずみずしさがあり、宮崎監督とクリエイターたちの若々しい感性が至るところで開花しているところが最高だ。
ある意味、『君たちはどう生きるか』は、想いを受け継ぐことの大切さも描かれているが、映画のバックグラウンドにおいても、同じような構図が繰り広げられていたことも実に感慨深い。すなわち宮崎監督の作家魂が若い人々に継承されていく感じ。
加えて、劇中では、これまでの宮崎アニメを彷彿させるオマージュもふんだんに盛り込まれているし、さらにアップグレードされた表現にもうなる。宮崎アニメに欠かせない少年と少女のスキンシップや、脇にいる愉快なおばあちゃんキャラたち、『風の谷のナウシカ』を思わせる“風”の使い方や小道具、『もののけ姫』(97)のこだま的な癒やしキャラやに、『崖の上のポニョ』(08)でのうねるような波や水の表現など、ファン垂涎の内容に心は揺さぶられっぱなしだ。
最後に声を大にして言いたいのは、本作が映画館で観るにふさわしい作品となったことだ。こういう作品こそ、ぜひいい環境のスクリーンで体感していただきたい。ドルビーシネマ、ドルビーアトモスはもちろん、スタジオジブリ作品としては初のIMAX上映もされているので、ぜひ劇場で巨匠が手掛けた渾身の1作の目撃者となってほしい。
文/山崎伸子
※宮崎駿の「崎」は正式には「たつさき」