伝説がいよいよ本格的に始動する『キングダム 運命の炎』、大人たちの目には届かない“危険な遊び“『イノセンツ』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、天下の大将軍を夢見る少年と中華統一を目指す若き王を描く「キングダム」シリーズ第3弾、無垢な子どもたちが引き起こす北欧発のサイキック・スリラー、2人の京劇俳優の激動の50年を描く一大叙事詩の、心を動かす3本。
「キングダム」伝説がいよいよ本格的に始動…『キングダム 運命の炎』(公開中)
戦災孤児の少年、信(山崎賢人)と、秦の若き国王、嬴政(吉沢亮)がともに中華統一を目指す姿を壮大なスケールで描く大ヒットシリーズの第3弾『キングダム 運命の炎』。前作では信の初陣“蛇甘平原(だかんへいげん)の戦い“が描かれたが、前2作同様、原作者の原泰久が脚本に参加した本作は大きく2部構成になっているのが注目のポイントだ。
隣国の趙が秦に突如攻め込んでくるところから物語は始まり、嬴政の知られざる過去に迫る原作コミックでも人気の「紫夏編」へと移行。嬴政がなぜ中華統一に燃えるのか?が哀切のエピソードと決死のスペクタクルで描かれ、少年時代の嬴政にも挑んだ吉沢亮と、闇商人、紫夏に扮した杏が魂の芝居でそれを体現するから自然に感涙してしまう。そして、そのベースを踏まえた上で、伝説の大将軍である王騎(大沢たかお)と100人の兵士を率いる隊長になった信が同じ戦場に立つ“馬陽の戦い“へと突き進むから、放っておいても盛り上がる。さらに、ますます逞しくなった山崎賢人演じる信が趙の2万の軍勢に奇襲を仕掛け、清野菜名扮する羌瘣が前作以上のアクロバティックなアクションを炸裂!終盤には新たなるとんでもないキャラが登場するサプライズもあるし、「キングダム」伝説がいよいよ本格的に始動する。(映画ライター・イソガイマサト)
あどけなさと残酷さが同居する子どもたち…『イノセンツ』(公開中)
幼い子どもはとかく“純真無垢”な存在だと言われる。しかし汚れなきゆえに物事の善悪の区別がつかず、無邪気ないたずらを繰り返したりもする。北欧ノルウェーで製作された本作は、そんな子どもたちがもしも超能力に目覚めたら何が起こるのかを映像化したサイキック・スリラー。郊外の団地でサイコキネシス(念動力)やテレパシー(精神感応)を駆使した遊びに熱中する4人の子どもが、そのうちのひとりの暴走をきっかけに、命さえ脅かされる事態に陥っていく姿を映しだす。
大友克洋の傑作漫画「童夢」にもインスパイアされたという新鋭のエスキル・フォクト監督が、あどけなさと残酷さが同居する子どもたちの生態をリアルに描出。派手なスペクタクルを強調しがちなハリウッド映画とは対照的に、超能力を子どもの内なる感情の揺らぎとリンクさせた繊細な作風も特徴的だ。大人たちの目には届かない“危険な遊び“の行く末を見届けよう!(映画ライター・高橋諭治)
運命の絡まる糸がダイナミックに導いてゆく…『さらば、わが愛 覇王別姫 4K』(公開中)
これもひとつの“定め“であろうか。公開30周年の特別企画、そして香港の、もといアジアのスーパースター、レスリー・チャンの没後20年というタイミングであの『さらば、わが愛/覇王別姫』が4K版となってスクリーンに──。本作で初めて京劇と北京語に挑んだレスリーは、華麗にして妖艶、しかも「込み入った内面」を持つ女形のスターを演じた。いや!込み入った内面と波瀾万丈な歴史に突き動かされていくのはレスリーの役柄だけでなく、その想いが重ねられた古典名作「覇王別姫」の共演者(チャン・フォンイー)やキーパーソンである娼女(コン・リー)もそう。
運命の絡まる糸がダイナミックに導いてゆく、およそ50年間にもわたる大河メロドラマにして一大叙事詩で、観たあとは心射抜かれて、放心状態に陥ること必至だ。1993年、第46回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞、巨匠チェン・カイコー監督の長く濃ゆいキャリア上においても“頂き“に達したマスターピースだと思う。(ライター・轟夕起夫)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記