没後20年、『さらば、わが愛 覇王別姫 4K』でよみがえるレスリー・チャンの揺るがない魅力|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
没後20年、『さらば、わが愛 覇王別姫 4K』でよみがえるレスリー・チャンの揺るがない魅力

コラム

没後20年、『さらば、わが愛 覇王別姫 4K』でよみがえるレスリー・チャンの揺るがない魅力

「夢で会おう」と男は一言、女の背後から囁くと、あたりに強烈な色香を残してスッと去っていった。映画『欲望の翼』(90)の冒頭のシークエンス。こんなエモエモな場面を演じて、鮮やかにキメられるアクターはそうはいない。

【写真を見る】京劇の女形スター、程蝶衣(チョン・ティエイ―)を演じた『さらば、わが愛/覇王別姫 4K』
【写真を見る】京劇の女形スター、程蝶衣(チョン・ティエイ―)を演じた『さらば、わが愛/覇王別姫 4K』[c]1993 Tomson(Hong Kong)Films Co.,Ltd.

伊達男の名は張國榮/レスリー・チャンだ。香港の大明星、そして、アジアのスーパースター。その没後20周年を記念したイベントが今年、所縁ある各地で行われているのだが、ここ日本でも7月28日(金)より、レスリーが主演、巨匠チェン・カイコーが監督した傑作『さらば、わが愛/覇王別姫』(93)が4K版となって全国順次上映される。

京劇のスターを演じた『さらば、わが愛/覇王別姫』で大絶賛

中国・香港・台湾の合作で、第46回カンヌ国際映画祭にて最高賞のパルムドールに輝いた『さらば、わが愛/覇王別姫』は50年間にもわたる一大叙事詩であり、心揺さぶられる大河メロドラマでもある。レスリーは、長じて京劇の女形のスターとなる役。古典名作「覇王別姫」の共演者(チャン・フォンイー)は幼い頃から苦楽を共にしてきた親友だ。実は彼のことを秘かに愛していたのだけれども相手は遊郭で知り合った娼女(コン・リー)と結婚、以後濃密な愛憎劇が展開する中、そこに文化大革命など中国の動乱の歴史が絡んでくる。初めて京劇と北京語にチャレンジし、レスリーは華麗にして妖艶なる女形を体現しつつ複雑なキャラクターの内面表現も手中に収め、大絶賛された。

ちょっと個人的な体験を記すが、この映画と共に日本へとやってきたレスリー・チャンを目撃し、ひどく感激した覚えがある。一般劇場公開は1994年の2月から。それに先立って1993年、第6回東京国際映画祭の特別招聘作品として披露され、レスリーも来日したのだった。あわせて映画祭のヤングシネマ・コンペティションに審査員の一人として、委員長のヴィム・ヴェンダース監督、フランス人プロデューサーのクローディー・オサール、作家のポール・オースター、鈴木清順監督らと並んで参加、渋谷オーチャードホールでのクロージングセレモニーに姿を現した瞬間の、満員の観客の熱狂ぶりが今も脳裏に焼き付いている。

『白髪魔女伝』(93)では、狼女と恋に落ちる武術家役。顔を隠した髪型も話題に
『白髪魔女伝』(93)では、狼女と恋に落ちる武術家役。顔を隠した髪型も話題に[c]Everett Collection/AFLO

振り返って、筆者が最初に出演映画を観たのは80年代の半ば、確か海賊版の輸入ビデオだったと思うが『烈火青春』(82)で、これは未公開ののちに2005年、『レスリー・チャン 嵐の青春』の邦題でDVD化された。まだレスリーや監督のパトリック・タムのこともよく知らないまま触れていたのだが、やがて香港ノワールブームの火付け役となるジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』(86)や、斬新なワイヤーアクションも話題となったツイ・ハーク製作、チン・シウトン監督の『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』(87)などに魅了されながら、アイドル的人気と実力の上昇線を描いてきたレスリーの(歌手と俳優の)両キャリアをようやく認識していった。


『さらば、わが愛~』に続き、チェン・カイコ―監督、コン・リー共演で挑んだラブストーリー『花の影』
『さらば、わが愛~』に続き、チェン・カイコ―監督、コン・リー共演で挑んだラブストーリー『花の影』[c]Everett Collection/AFLO

日本では遅れて1989年の公開になった『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』の記者会見に登壇。が、その前に歌手として1987年、第16回東京音楽祭ASIAN DAY(アジア大会)にスペシャルゲストで呼ばれており、持ち歌の「無心睡眠」と、さらには「冬のリヴィエラ」を本家の森進一、ゲストのアラン・タム、チョー・ヨンピルらと唄った。次いで1989年、第18回東京音楽祭の同大会では自ら作曲した「由零開始」を香港代表として広東語で歌唱……思えばレスリーは度々、いろんな機会に日本を訪れてくれていたのだった。

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