『SATC』から『お嬢さん』、タランティーノ作品まで!おしゃれさん必見のファッション愛あふれる5選

コラム

『SATC』から『お嬢さん』、タランティーノ作品まで!おしゃれさん必見のファッション愛あふれる5選

魅惑的なドレスも見どころ『お嬢さん』

東洋と西洋のエッセンスとも味わえる『お嬢さん』
東洋と西洋のエッセンスとも味わえる『お嬢さん』[c]2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED

1930年代、日本統治下の韓国で、スラム街で育った詐欺師の少女、スッキ(キム・テリ)が、莫大な遺産の相続権を持つ貴族の令嬢、秀子(キム・ミニ)の豪邸にメイドとして入り、2人はいつしか強く惹かれていく。監督のパク・チャヌクがサラ・ウォルターズの原作「荊の城」の舞台をヴィクトリア朝のロンドンから日本統治下の韓国に舞台を変えた時点で、衣装作りも自由奔放にシフト。

キム・ミニが扮する令嬢、秀子の華やかなルックに注目(『お嬢さん』)
キム・ミニが扮する令嬢、秀子の華やかなルックに注目(『お嬢さん』)[c]2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED

それは特に、秀子の装いに顕著だ。用意されたのは全25着。秀子が豪邸内で着ているベアトップの緑のドレスは、袖がバルーンスリーブになっていて、袖先にはレースが縫い付けられているという斬新な設え。また、晩餐会で着るゴールドのドレス、散歩に出かける時の白いドレスとつばの広い帽子、そして、朗読のシーンでは一転して和服に身を包み、芸者風の髪とメイクを施している。なかでも、黒地に緑の錦織の紋付袴姿は圧巻だ。また、何着かのドレスには皮の手袋がコーデされていている。ドレスに革手袋なんて、フェティッシュの典型ではないか!?そこにはまさに、衣装担当の遊び心が象徴されている。1930年代の韓国では、まだ、床までの長さのスカートも、劇中に登場するコルセットも流行っていなかったという説もある。もちろん、フェティッシュも然り。でも、『オールドボーイ』(03)で知られる衣装担当のチョ・サンギョンは、監督がそうしたように衣装も時代考証を大胆に踏み越えて、自由な服作りを楽しんでいる風だ。自由こそが衣装デザインの醍醐味だと言わんばかりに。韓国発の日本風貴族服なんて、すてきすぎる!

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で60年代末のハリウッドスタイルを満喫

レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットという2大スターが初共演を果たした『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットという2大スターが初共演を果たした『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』[c]2019 Visiona Romantica, Inc. All Rights Reserved.

クエンティン・タランティーノが愛してやまない1960年代後半のハリウッドへと観客を誘ってくれる。当時のハリウッドは台頭するテレビに押され、レオナルド・ディカプリオ演じる落ち目の西部劇スター、リック・ダルトンは、イタリアに渡って再起の機会を狙っている。そんなリックに影のように寄り添うブラッド・ピット扮する親友でスタントマンのクリフ・ブースが漂わせる、何かしでかしそうな雰囲気が気になる。なにかが起こりそうといえば、ハリウッド全体を覆う見た目は明るいのにどこか暗い、独特のムードが映画を覆っている。退廃とも違う、危険なムードが。でも、当時のファッションはいまに通じるアメカジの宝庫だ。特にメンズは、ディカプリオが着るレザージャケットやピットが羽織るデニムのジャケットに、憧れを超えてシンパシーを感じるに違いない。

ブラッド・ピットの筋肉ボディにヴィンテージ・アロハ、1960年代のハリウッドスタイルを見逃しなく!
ブラッド・ピットの筋肉ボディにヴィンテージ・アロハ、1960年代のハリウッドスタイルを見逃しなく![c]EVERETT/AFLO

ここではピットのワードローブに特化して語ってみたい。まず、彼が愛用するアジアンモチーフのヴィンテージ・アロハは前をはだけて羽織るのが鉄則だ。1950年代から70年代にかけてカリフォルニアのロングビーチに存在したカーレース場、”Lion’s Raceway”の名前がプリントされたTシャツを着ているシーンも。また、恐らくリーバイス501「66の後期モデル」と思しきジーンズとジージャン、そして、1964年にアメリカで創業し、モカシンを流行らせた”ミネトンカ”のフリンジ付きブーツがおしゃれ好きの目を奪う。肝心なのは、アメカジをかっこよく着るにはピットのようにタイムレスに鍛えあげたナイスボディが必須だということだ。服とボディ、わかってはいるけれど。

90年代の東京をリアルに再現「TOKYO VICE」、メンズファッションにも注目


アンセル・エルゴートと渡辺謙が共演!1990年代のメンズスタイルも見どころの一つ(「TOKYO VICE」)
アンセル・エルゴートと渡辺謙が共演!1990年代のメンズスタイルも見どころの一つ(「TOKYO VICE」)HBO Max / James Lisle

アンセル・エルゴート扮する若きアメリカ人新人記者、ジェイクが、渡辺謙が演じる警視庁のベテラン刑事、片桐に連れられ、ヤクザが支配する暗黒街に足を踏み入れていく物語の時代背景は1999年の東京。1990年代といえば、メンズスーツの分野では、全体に丸みを帯びたルーズなシルエットが、細身のスーツに取って代わる間際の転換期。ジョルジオ・アルマーニが『アメリカン・ジゴロ』(80)に服を提供してからすでに10年が経過し、まだ、イタリアのスーツがダンディの極致だと考えられていた頃だ。片桐が着ているフロントが緩いダブルのスーツにはそんな時代の流行りが反映されている。一方、ジェイクはウエストが若干絞り気味で、全体的にシルエットが細いスーツを選んでいる。そこに、時代の変化を読み取ることもできる。演じ終えた渡辺謙は、与えられた衣装について「着てみると、気分はまさに“90年代”という感じでした」と後述。服が誘う過ぎた時代へのトリップ。それが「TOKYO VICE」が提案する味わい方の一つなのだ。

文/清藤秀人

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■『お嬢さん』[R15+指定版]
WOWOW4K 8月17日(木) 2:00~
■『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
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