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御年80歳、デヴィッド・クローネンバーグが振り返る“原体験”「サナギと成虫は同一の存在なのか考えていた」

インタビュー

御年80歳、デヴィッド・クローネンバーグが振り返る“原体験”「サナギと成虫は同一の存在なのか考えていた」

「真なるシネマを映しだすのは映画館だけではない」

カンヌ国際映画祭に登壇したクローネンバーグにモーテンセン、レア・セドゥ、スチュワート
カンヌ国際映画祭に登壇したクローネンバーグにモーテンセン、レア・セドゥ、スチュワート写真:SPLASH/アフロ

配信コンテンツの普及などもあり、映画館で映画を観ること自体の意義が問われてきて久しい。こういった状況についてクローネンバーグに意見を求めると、「私は楽観視しています。でも、みなさんにとっては悲観視かもしれません」という彼らしい興味深い答えが返ってきた。

「真なるシネマを映しだすのは映画館だけではないというのが私の考えで、『スキャナーズ』や『ビデオドローム』を撮っていた頃から、映画館よりもテレビで映画を観る人の方がはるかに多くなっていくだろうと感じていました。いろんな手段で映画を観てもいいんです。それはテレビでもいいし、iMacやiPadも同じです。私自身、そういうデバイスでもっぱら映画を観ていることが多いんですよ。今後、映画館で興行として上映されるのはスーパーヒーローものばかりになるかもしれません。映画が大多数の人にとって自宅で楽しむコンテンツになる可能性もありますが、それについて特に悲しんだりはしません。むしろ大歓迎。ハッピーです」。

公開手術のパフォーマンスでソールの体内から新しい臓器を取り出すパートナーのカプリース
公開手術のパフォーマンスでソールの体内から新しい臓器を取り出すパートナーのカプリース[c]2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A. [c]Serendipity Point Films 2021

続けて、こういった映画や映画館の状況について、ある巨匠監督との間で起きたエピソードを明かしてくれた。「ちょうどおもしろいお話がありました。以前、ヴェネチア国際映画祭でスパイク・リーとお会いする機会があり、彼から『映画館は教会なんだ。その教会を我々は大事にしなければならない』と熱弁されたのですが、そこで私は少しちょっかいを出してしまいました(笑)。『アラビアのロレンス』の腕時計をしていたので、それを見せながら『ほらほらスパイク!こうやって時計の中でも『アラビアのロレンス』を映しだすことができるんだよ。ラクダもちゃんと見えるでしょ?』と。冗談半分でからかっただけではありますが、これが私の見方なんですよ」。


ソールたちのパフォーマンスに惹かれるティムリン
ソールたちのパフォーマンスに惹かれるティムリン[c]2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A. [c]Serendipity Point Films 2021

アートに医学、環境問題、テクノロジー、倫理と様々な要素をはらんだ『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』。ヴィゴ・モーテンセンにキャロル・スピア、そして劇伴を担当したのもおなじみのハワード・ショアと、デヴィッド・クローネンバーグが信頼できるチームで作り上げた作品であることでも必見だ。クローネンバーグなら「デバイスで観てもいいよ」と言ってくれそうだが、ここはぜひ!劇場でその未知の世界を体験してほしい。

取材・文/平尾嘉浩

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