GENERATIONSを震え上がらせたホラークイーン“さな”が編集部に出現…呪いをかわす方法は?
私が知る限りの録音機器の頂点。高いところの音もバッチリ録音できる高い指向性を持つのが、業務用のガンマイク。テレビ番組でしばしば見る、ヘッドフォンをした音声さんが長い棒のようなものを伸ばしているアレだ。備品が積まれた棚から頑丈そうなケースに入ったそれを秒速で見つけだし、作動することを確認した。
この日の気温は35度以上。いくら霊といえども熱中症になりかねない暑さではないだろうか。ダッシュで公園に戻ってくると、さなは最近の危険な暑さを知らないのか、日当たりのいいところでちんまりとしゃがみこんで、こちらを睨んでいた。
「大変お待たせいたしました。こちらをお試しいただけますでしょうか?」と持ってきたケースを開け、ウインドスクリーンにマイクを収め、配線まですべて準備した状態でさなに渡した。ヘッドフォンも持ってきたので同時に音を確認することができるし、なにより不思議なほど録音スタッフの格好がさまになっている。
1メートルほどマイクブームを伸ばし、先ほどまでは届かなかった位置へマイクを向けるさな。本格的な機材にときめいているのか、後ろ姿が先ほどよりも明るく感じられる。
「ボト」またしてもセミが落ちた。今度こそ頼むぞ…。
マイクを下ろしたさながゆっくりとこちらに振り返ると、満足そうな笑みを浮かべていた。一瞬ゾッとしたけれど、これは間違いなく手応えがあった表情だ!
「よかった…」。身体の中心から、安堵のため息がこぼれ出た。きっとこれで満足してくれたはず。そう思ってぎゅっと目を強くつむり、ふたたび目を開いた時には、もう視線の先にさなの姿はなかった。録音マンとしての達成感と共に成仏してくれたのかもしれない。
幸いなことに、ガンマイクのおかげで私はさなに呪われずに済んだ。しかし『ミンナのウタ』の劇中ではGENERATIONSのメンバーたちにもっと強力なさなの呪いが襲いかかる。いったい彼らはどうやってそこから解放されるのか。それは映画館のスクリーンで確かめてみてほしい。目の前に突然さながやってきたとしても、どう対処すべきか参考になるはずだ。
そういえば、さなが去ったあとにポケットに見覚えのないカセットテープが一つ入っていた。気になるので編集部に戻ったら聴いてみようと思う。私は頭のなかに浮かんだ鼻歌を口ずさみながら、公園を出た。
取材・文/久保田 和馬