「ピクサーはとんでもなくハードルの高い挑戦をした!」映画人の声からひも解く『マイ・エレメント』高評価のワケ
8月4日に日本公開を迎えたディズニー&ピクサーの最新作『マイ・エレメント』(公開中)。公開翌週末の興行収入は前週比で8.1%増、公開から10日間で興行収入10億円を突破するなど、超大作がひしめき合う夏の映画シーズンで注目を集めている。
『アーロと少年』(15)のピーター・ソーン監督による本作は、火、水、土、風の4つのエレメント(元素)が暮らすエレメント・シティを舞台にした物語。火のエレメントの少女エンバーと、水のエレメントの青年ウェイドという資質から性格まで違った2人が心を通わせていく姿が描かれる。『トイ・ストーリー』(95)ではおもちゃの世界、『モンスターズ・インク』(01)はモンスターの世界、そして『インサイド・ヘッド』(15)では喜びや悲しみといった感情の世界など、これまで数多くの“もしもの世界”を描いてきたピクサーならではの本作の見どころを、ディズニー&ピクサーを愛してやまない各界著名人から寄せられたコメントと共にひも解いていく。
※本記事は、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。
「自分の中の火や水が刺激されました」キャラクターへの共感と感情揺さぶるドラマ
本作の主人公は、父親が経営する商店で働く火のエレメントのエンバー。明るく元気な一方、感情的という欠点はあるが、両親から愛情たっぷりに育てられた心優しい女の子だ。そんな彼女が偶然出会ったのが、市役所に務める水のエレメントのウェイド。ちょっと不器用だが裏表がなく、陽気で誰にでも親身に接する涙もろい青年である。2人はしだいに距離を縮めていくが、エレメント・シティでは「違うエレメントとは関わらない」のが暗黙のルール。違う場所から移り住んだことで肩身の狭い想いをしてきた父の気持ちを思ったエンバーは、水であるウェイドと距離を置くことにする…。
漫画家・コラムニストの辛酸なめ子は、「地球や人間の体を構成する火、水、土、風のエレメント。火のエンバーが怒ったり熱くなったり、水のウェイドが感極まって号泣したりするたびに、自分の中の火や水が刺激されました」とストレートに想いをぶつけ合うキャラクターに共感したそう。「こんなに感情が揺り動かされるアニメーションははじめてです。実はエレメント・シティは自分の内側にも存在しているのかもしれません」と胸を打つドラマを称賛した。
アニメーションの真髄は、命のない絵やものが生き生きと動く姿。誕生以来、様々なキャラクターに命を与えてきたディズニー&ピクサーは、今作で自然の根源である元素をキャラクターにチョイスした。新聞、ラジオ、雑誌など多くのメディアで活躍しているアニメ評論家の藤津亮太は「火や水を共感できるキャラクターとして創造する。簡単そうに見えて、とてつもなく難しいこの課題に、本作はとても魅力的な解答を出した」とその姿勢を高く評価。イマジネーションあふれるキャラクターの表現法にも賛辞を送った。「火のエレメント・エンバーは、赤や紫に色を変えながらゆらめくことで感情を伝える。水のエレメント・ウェイドの透ける体や溢れる涙は、包容力と共感力を体現する。本作は、アニメーションならではの想像力を駆使し、私たちの中にある様々な感情をストレートにすくいあげてくれるのだ」。