「ピクサーはとんでもなくハードルの高い挑戦をした!」映画人の声からひも解く『マイ・エレメント』高評価のワケ
「実社会と重ねながら世界観を深く読み解きたくなる」ディズニー&ピクサーの表現力の幅広さ
本格的に活動を開始した1980年代から現在に至るまで、CGアニメーションのトップブランドとして上質なアニメーションを作り続けているディズニー&ピクサー。状況によって形状が流動しつづけ、触れ合うことの難しい火、水、土、風に繊細な感情表現をさせた本作はディズニー&ピクサーの真骨頂といえる。『フレンズ もののけ島のナキ』(11)や『STAND BY ME ドラえもん』(14)など数々の大ヒットCGアニメーションを手掛けてきた映画監督の八木竜一は、本作を観て「ピクサーのエレメントマジックに頭がクラクラです!」と言い、「火や水などをキャラにして物語を作るなんて!感情によって変化したり、状況によって変化したり…、もう縦横無尽に余す所なく使いこなしているんです」と驚きを隠さない。キャラクターたちの演出も各エレメントの特色が最大限に活かされているが、八木は終盤で描かれるウェイドの雫(しずく)の描写に「水だからこそ出来る表現で、とても心を動かされました」と感激。「ピクサーはとんでもなくハードルの高い挑戦をこの映画でしています!!」と絶賛した。
エンバーとウェイドを巡るドラマや緻密なアニメーション以外にも、ハラハラドキドキのアクションやエレメント・シティの幻想的な世界観、心地よい音楽など見どころが多い本作だが、多様性や社会と個の関わりといった社会性あるテーマも持っている。TVや舞台、CMなど幅広く活躍している俳優の豊田エリーは、あらゆる層を虜にするディズニー&ピクサーらしい“広さ”を称えた。「魅力溢れる個性的なキャラクターたちに子どもはワクワク、そして大人は実社会と重ねながら世界観を深く読み解きたくなる、ディズニー&ピクサーの手腕は今回もさすが!」。タイトルの“マイ・エレメント”は“自分の可能性“、しいては“本当の自分”という意味も持つ。エンバーはウェイドに恋をしたのを機に、本当の自分は何者なのか?なにをしたいのか?という疑問を抱いていく。「大切な相手と出会うことで夢が広がり、自分の成長にも繋がってゆく、そんなピュアで美しい恋心の芽生えが描かれていて、胸がポッとあたたかくなりました」と言う豊田は、本作はいまを生きる人に観てほしい映画だと語った。「悪役がいなくても偏見や軋轢は生まれてしまうけれど、しなやかに健やかに乗り越えるためのヒントがたくさん散りばめられている、素敵な映画です」。
アニメーションならではの自由さや楽しさを活かしつつ、世代を超えて共感を呼ぶ絆の物語を繰り広げる『マイ・エレメント』。ディズニー&ピクサーの魅力がぎっしり詰まったいま観るべき作品である。