見どころが多すぎて一度じゃもの足りない…『BE:the ONE』ScreenX版をレビュー!

コラム

見どころが多すぎて一度じゃもの足りない…『BE:the ONE』ScreenX版をレビュー!

SKY-HIがプロデュースする7人組ボーイズグループ、BE:FIRSTの初となるライブドキュメンタリー映画『BE:the ONE』が公開中だ。グループ初の全国ツアー「BE:FIRST 1st One Man Tour “BE:1” 2022-2023」のライブパフォーマンスを軸に、2021年の結成からの歩みや、韓国で撮影されたメンバーのインタビューや「Message -Acoustic Ver.-」のスペシャルパフォーマンスを堪能できる。本稿では、2D版に加え4DXなど多彩なフォーマットでの上映も行われている本作のScreenX版をレビュー。臨場感あふれるライブフィルムとしての見応えから、彼らがBE:FIRST、ひいては音楽にどんな想いで向き合ってきたのかを全身で体感できる、本作の見どころをお届けしたい。

ライブ会場へ飛び込んだかのような没入感!

本作は「BE:GIN」「BE:AT」「BE:LIEF」「BE:STY」「BE:YOND」で構成されており、それぞれのテーマについての撮り下ろしインタビューを交えながら、ライブパフォーマンス映像を楽しむことができる。彼らの言葉を受けたあとに見るパフォーマンスは、不思議とまた違う顔を見せ、楽曲の解像度がさらに高まる機会にもなった。

【写真を見る】臨場感がハンパじゃない!BE:FIRST迫力のライブシーンは映画館の巨大スクリーンで楽しもう
【写真を見る】臨場感がハンパじゃない!BE:FIRST迫力のライブシーンは映画館の巨大スクリーンで楽しもう[c] B-ME & CJ 4DPLEX All Rights Reserved.

ScreenXでは、前方スクリーンのみならず左右にも映像が広がる。視野を埋めつくすペンライトの光にひとたび飲み込まれれば、そこはライブ会場。映画鑑賞というよりも、ライブの追体験だ。ScreenXならではの演出や映像効果により、冒頭からスクリーンの中へと飛び込むような光の波に誘われ、パフォーマンスにおいては、2Dでは映されていないメンバーの姿も見ることができる。

例えば「Spin!」のあるシーンでは、右手のスクリーンに映るSHUNTOの表情に注目だ。「Scream」では、歌唱中のメンバーを別アングルから捉えた映像が3面すべてを埋めつくし、圧巻のステージングで会場を沸かせた「Boom Boom Back」では、人間の視野角をゆうに超える270度にわたってBE:FIRSTのパフォーマンスが展開される。同曲で見せる、リミッターが外れたSOTAの、ステージに没入する表情や関節ひとつひとつの動きは、映画館ならではの良質な重低音と相まって、まるで座席を揺らすよう。隣には小さく手を動かして踊るファンの姿もあった。一度では、とても目が足りない。

映画公開を前にMOVIE WALKER PRESSで行ったLEOとMANATOのインタビューでは、「例えば1回目はScreenXで観て、次は2Dで観て、というふうに楽しみ方を変えて観ていただくのが一番いいんじゃないかな」とLEOが語っていたように、好みの鑑賞スタイルを見つけることも楽しみの一つ。実際、2Dではどのような映像が見られるのか、4DXではどういった体験を得られるのか、鑑賞後には様々な想像が広がった。

“夢のはじまり”に立ったBE:FIRSTが、いま語ること

7人のバックショットが印象的な『BE:the ONE』ポスタービジュアル
7人のバックショットが印象的な『BE:the ONE』ポスタービジュアル[c] B-ME & CJ 4DPLEX All Rights Reserved.

作中で最も印象深かったのは、キービジュアルにも採用された、7人のバックショットを捉えたシーン。まるで彼らも、我々と一緒に『BE:the ONE』を見ていたかのような演出がなされている。それは、先述のインタビューで「まさにあの言葉(映画のキャッチコピーの『こんな夢が見たかったんだ――』)がハマっていると思う」と、MANATOが語っていた通りの姿だった。

彼らが見つめるスクリーンに映しだされるもの――それは、かつては“夢”だと思っていた、まぎれもない現実。そして、あたたかく幸せな存在。その瞬間のBE:FIRSTは、アーティストを夢見ていた少年たちのままに見えた。

作品の終盤。JUNONは多くの人の前で歌うようになったいまの幸せについて、「1人で歌うことも好きだったけど」といった趣旨の前置きをしている。その言葉のとおり、メンバーはみな「THE FIRST」のころから音楽に誠実で、音楽が大好きだった。だからこそ、BMSG主催のオーディションに挑戦したのだとも思う。しかし、歌うことや踊ることが大好きでも、当時の彼らの多くには、見てくれる「誰か」がいなかった。夢をあきらめなければならない時が迫っている者もいた。「人生」と言えるほど、音楽を愛しているのに。

彼らの絆の強さをより感じることができるバックステージの様子も
彼らの絆の強さをより感じることができるバックステージの様子も[c] B-ME & CJ 4DPLEX All Rights Reserved.

けれど彼らはBE:FIRSTになり、表現できる場所を見つけた。なによりも、届ける相手を見つけた。もちろん彼らは、好きだから、やりたいから音楽をやっているのだと思う。けれど「やりたいから」だけが理由ならば、激動の音楽業界に身を置く必要はない。彼らはきっと「届けたい」から音楽をやっているのだということが、作品を通して伝わってきた。

だからBE:FIRSTは、ライブでより一層輝くのだろう。ライブこそ、ダイレクトに音楽を届けられる場所であるから。作品冒頭から引き込まれたペンライトの光、それは、ファンが「そこにいる」という証なのだと、あるメンバーの言葉で気づき、ハッとした。それは、ステージに立つ者にしかわからない感覚だ。

<そこに君がいなきゃ 色も匂いもないんだ>。本作のために特別に披露された「Message -Acoustic Ver.-」のこんな一節が、彼らに重なった。ファンがいなければ、届ける人がいなければ、彼らの音楽は成立しないのだろうと。

ずっと自分たちを支えてきてくれたBESTYの存在についても語った
ずっと自分たちを支えてきてくれたBESTYの存在についても語った[c] B-ME & CJ 4DPLEX All Rights Reserved.

届けられる場所を、届ける相手を、ずっと探していた7人。「自分たちを見せたい」のではなく、音楽そのものを、ひいては音楽を通して「なにか」を、届けるために生まれたBE:FIRST。時に人は、それを使命というし、彼らの出会いを運命ともいうだろう。けれど、それは決して堅苦しいものではなく…例えば、メンバーについて語る自身に照れくさそうに笑った、RYOKIの言葉。そうした朗らかさが、作品全体を包んでいた。

インタビューパートでの彼らの言葉は、決して機械的なものではない。「THE FIRST」のころよりも大人になり、プロフェッショナルになったが、あくまでも「ひとりの人間」として話していることが、年齢相応のナチュラルな言葉から伝わる。SHUNTOの第一印象について語るRYUHEIの素直な言葉や、それを受けたSHUNTOの反応も、BE:FIRSTを見続けてきたBESTYにとってはほほえましいものであるはず。そして彼らの素顔――ライブセットの下を、トロッコに乗って運ばれるおとなしい姿、わいわい言いながらのボイストレーニング、隙あらば歌い、とにかくよく話す姿を見ていると、ステージで見せる覇気はどこへやら、だ。


デビューから2年の時が経った7人組ボーイズグループ、BE:FIRST
デビューから2年の時が経った7人組ボーイズグループ、BE:FIRST[c] B-ME & CJ 4DPLEX All Rights Reserved.

『BE:the ONE』は、BE:FIRSTが夢を叶えた物語ではなく、夢のはじまりに立ったことを示す証左。2年間の集大成的構成でありながら、未来を感じる作品だった。

文/新亜希子

作品情報へ

関連作品

  • BE:the ONE

    4.9
    3552
    BE:FIRST初の全国ツアーのライブパフォーマンスを中心にしたドキュメンタリー映画