ファーストサマーウイカが体当たりで挑んだ“美雪”『禁じられた遊び』で見る新たなホラークイーン像
清水カルマの同名デビュー小説を、『リング』(98)、『事故物件 恐い間取り』(20)などで知られる中田秀夫監督が映画化した『禁じられた遊び』(公開中)。本作では、新時代のホラーアイコン“美雪”をファーストサマーウイカが体当たりで怪演している。ウイカによる“美雪”はどう恐ろしいのか?彼女はどのようにそのおぞましいキャラクターを作り上げたのか?本稿では、本作でのウイカの存在感について紹介していく。
中田秀夫のエッセンスが存分に詰まった『禁じられた遊び』
事故で亡くなった母親が幼い子どもの純粋な願いで蘇り、最凶のモンスター“美雪”となって、夫の伊原直人(重岡大毅)と、彼の元同僚で現在は映像ディレクターとして働く倉沢比呂子(橋本環奈)に襲いかかる。そんなおぞましい展開を見せる『禁じられた遊び』には、『リング』や『貞子』(19)などで観る者を震撼させ続けてきた中田監督ならではの、ジャパニーズホラーのエッセンスがぎっしり。ちょっとした好奇心や悪戯心が起動させてしまう日常に潜む恐怖、忍び寄る忌まわしい影、次々に起こる怪現象と不気味な音…。それらがエスカレートし、ゾワゾワ感がマックスになったところで、本作の恐怖の元凶“美雪”がついに登場する。
これまでの日本のホラークイーンとの“違い”
“美雪”は生前から嫉妬深く、理性を失った憎悪の力=怨念を伴う生霊となって自分が憎しみを抱く標的に襲いかかっていた。遠隔で物を破壊するサイコキネシスの能力と、人の心象を読み取る力を併せ持ち、さらには何度でも蘇生。醜く歪んだ形相で生き返るごとにその人間の領域を超えたモンスターパワーを増幅させ、トカゲのような体勢でスピーディに動き回り、これまで霊では持てないとされていた鉈を振り回して直接的に攻撃してくるから怖い。メンタルもフィジカルも、両方常識から逸脱しているところが『リング』の貞子や「呪怨」シリーズの伽耶子といった、従来のジャパニーズホラーのアイコンと大きく違う部分だ。
しかも、一度ねらった獲物は逃がさない。「絶対に許さない!殺してやる!」。その常軌を逸した執念深さこそが、“美雪”の恐ろしいパワーの源。強大な憎しみをもって襲いかかってくる彼女からは、誰も逃れることができない。