KREVAが解説する『ミュータント・タートルズ』サントラの必聴ポイントは?「日本の感覚とは違う、ヒップホップの本場“アメリカ”な選曲」
「M.O.P.の『Ante Up』が流れる時は、最高にテンションが上がりました」
本作の劇中歌には、Vanilla IceやDMXといった1990年代から2000年代初頭を席巻したヒップホップが多数使用されている。「いまはラップを聴いて育ってきた世代が成長して、新たなモノを作る時代に入ってきている」と語るKREVAは、「特別なシーンに無理矢理、ヒップホップを使っている感じが全然ない」のが好印象だったと解説する。「映画を観たあとに、ぜひサントラで聴き返してもらいたいんですけど、楽曲が生活のなかでさらっと流れてくる感じがするんですよね。これは、日常でヒップホップを本当に聴いているクリエイターたちが、いままで体感してきたことを表現しているんだと思います。例えば、バトルシーンでは気合いの入るような楽曲が流れなくて、スローなテンポのナンバーだったりして。生活にヒップホップがある様子というのを描きたいのかな?と感じました。逆にハラハラドキドキするシーンや、クライマックスみたいな絶対盛り上がる場面では、ヒップホップが使用されていなくて、映画の音楽(フィルムスコア)が流れるのもおもしろかったです」。
多数使用されている楽曲のなかで特に印象的なシーンは、タートルズがミュータント軍団と初めて出会って一緒にダベる場面とのこと。「ここで流れるのが、Ol' Dirty Bastardの『Shimmy Shimmy Ya』なんですが、リアルタイムで聴いていた世代だったら『この曲なんぞ!』って強烈に印象に残っている曲なんで、ここで使うのはうまいなと思いました。あと、タートルズのバトルシーンで、Blackstreetの『No Diggity』が流れてくるのには驚きました。日本人の普通の感覚なら大体BPMが速くて、ロックっぽいギターの入ったスピード感ある楽曲でいきたいと思うんですが、この曲はテンポが抑えめでクールな曲調なんです。これでバトルシーンを見せていくのが斬新で、なんか“本場アメリカ”って思いましたね(笑)」。
また、自身も強く影響を受けたアーティストも参加していると語るKREVAは、そのなかでも「M.O.P.の『Ante Up』が流れた時は、最高にテンションが上がりました」と笑顔を見せる。「僕がクラブでDJとかしていた時に流行った曲で、めちゃめちゃ影響を受けています。結構冒頭に流れるんで、いきなりテンション上がりましたね。イケイケで『全部奪っちまえ』みたいな歌詞とシーンがかなりマッチしていたんじゃないかと思います」。
日本語吹替版予告でも「Can I Kick It?」が使用されているA Tribe Called Questにもかなり影響を受けているとKREVAは続け、「A Tribe Called Questが所属している『Native Tongues』というアーティスト集団があって、すごく簡単に説明すると、ゴールドチェーンを付けているギャングみたいな感じではなくて、音楽好きな若者でナーディな感じの一派なんです。彼らは、僕たちが日本でヒップホップをやろうとする時に、佇まいとか曲調がとっつきやすかった。勉強になることがたくさんありました」と懐かしそうに振り返る。
この1990年から2000年代のヒップホップと、本作で流れる映画音楽(フィルムスコア)との音の差について、KREVAは合わせて解説する。「本作で使われているようなヒップホップ、特に1990年代のものは、現在の曲と比べると少し音像が狭いので、いまとなっては“ロウファイ”な感じに聴こえてきます。あと、ヒップホップの音の鳴り方は独特なんです。普通の感覚ではあり得ないぐらい音の数が少ないので、ほかのジャンルの音楽よりもドライで音の粒が浮いているように感じる曲が多いです。それが“ハイファイ”な映画館で流すための音楽(フィルムスコア)と組み合わさると、その差から音の広がりを感じて、クールでスリリングな感じが出るなと思いました。劇場のガッツリ音響のいいところで聴くと、より広がりが感じられると思います」。