KREVAが解説する『ミュータント・タートルズ』サントラの必聴ポイントは?「日本の感覚とは違う、ヒップホップの本場“アメリカ”な選曲」
「手を差し伸べてくれる仲間の大切さに気づける映画」
世界中で聴かれるジャンルの一つであるヒップホップだが、KREVAがティーンエイジャーだった当時は、いまと状況がまったく違っていたと想いを馳せる。「最近はだいぶなくなりましたが、どうやっても『ラッパーって、こういう感じでしょ?』というイメージがありますよね。いまでこそ世界中で流行っていますが、当時は周りにヒップホップが好きな人なんてほとんどいなかったです。もう同じ音楽を聴いているだけで仲良くなれるような世界でした。そのせいか本作を観て、タートルズたちのような“少数派”の気持ちっていうのもかなりわかる気がしていて。僕も当時は、『認めさせたい』みたいな気持ちもありました」。
自身も「認めさせたい」と感じていたと語るKREVAだが、本作でのタートルズの“認めさせ方”に時代の変化を感じたという。「僕は、認めてもらえないことに対してグジグジしているより、よい自分を魅せることでヒップホップに対する印象を変えていく“正攻法”で攻めていましたが、タートルズたちはこれがもっと優しい感じになっていると感じました。これは僕らの世代とは違う、ちょうどいまのティーンエイジで僕の娘たちぐらいの世代の感覚なのかなって。でもこれは、タートルズ育ちのクリエイターたちが、いまの世代に引き継いでいくために、古いままの姿からいまへとフィットさせたからだと思います。カルチャーなど自身が伝えたい部分とこれをうまくバランス取るには、相当な熱量と信念を持っていないと難しいんじゃないかな、みたいなことを考えました」。
そんな変化のなかでも、“仲間”の存在と“親子”の関係は変わらないと本作を観て感じ取ったと笑顔で話す。「ライブをする時のバンドメンバーのなかには、彼らの人生の半分近く一緒にいる仲間もいたりして、そうやって近くにいてくれるからこそ、わかってもらえたり受け入れてもらえたりする。これは世代とか関係ないんだと思います。『認めさせる』みたいな信念ももちろん大事だけど、手を差し伸べてくれる仲間の大切さに気づける、そんな映画だったのだと思いました。あと、タートルズとネズミの父親(スプリンター)との関係性。僕が親になったからか、タートルズに厳しくしすぎる父親の姿に、『それはダメでしょ!』と言いたくなりました(笑)。だからタートルズたちは、父親に嘘をついて人間の世界に行こうとする。でも僕も昔は親に黙って遊びに行ったりもしていたし、きっと僕の娘たちもいつかは、ね。もうこれは永遠の構図ですよね。一生人間はこれをやっていくのだと思います」。
取材・文/タナカシノブ