大泉洋が明かす、墨田区向島での撮影秘話「下町の風景がとても大事な要素になっている」
「山田洋次監督の『撮りたい』という熱意に驚いた」
大泉がとりわけ印象に残っているのが、墨田区と台東区をつなぐ言問橋での撮影だという。「言問橋で、昭夫がタクシーを拾おうとするシーンがあります。手を挙げてタクシーを拾おうとするんだけど、タクシーが通り過ぎてしまって、昭夫が『なんだよ、ちくしょう』と腹を立てるシーンです。もちろん撮影用のタクシーが走ってくるんですが、NGを一度出すと、そのタクシーは橋を渡り切って、ぐるっと回って撮影ポイントまで帰ってこないといけないわけです。タクシーが戻ってくるまでには10分くらいかかるんですが、山田監督はせっかちなのでその10分が待ちきれない(笑)。最終的にはタクシーが戻ってきていないのに、山田監督は『本番、行こう!』とおっしゃるんです。みんなも監督の勢いに押されて、『行っちゃいましょう』って。タクシーが戻ってこないままやったんですよ!あれには驚きましたね」と笑いながら、「『いま撮りたい』という想いがなにより大事」と湧きあがる熱意を大切にする山田監督の様子を紹介。
「そうしたら『よーい、スタート!』と声がかかった瞬間、本物のタクシーが来ちゃって。ここで僕が手を挙げたら、本当に止まってしまいますから!なんとかそれをやりすごして、僕は一般の乗用車に向けて手を挙げました(笑)。それで悔しがるという芝居をしているんですから、乗用車の方の目にはどう映ったんでしょうね(笑)。なんとそれでOKが出て、見事に本番として使われていました。完成作を観ると、たしかにそこにタクシーがいなくても気にならないんですよね。山田監督には、長年の経験でそういうこともわかるんだな、さすがだなと思いました」と感心しきり。また「監督がその場でランニングしている人を見つけて、エキストラとして出ていただいたりもしていましたね。監督は、エキストラさんにも細かくお芝居をつけるんですよ」と目尻を下げる。