ホウ・シャオシェン、エドワード・ヤンだけじゃない!台湾の気鋭監督の長編デビュー作から次なる推し監督を見つける
エンタメと政治劇が複雑に絡み合う、ジョン・スー監督の大ヒットホラー
続いて紹介するのは、日本でも公開時に話題となった、大人気ホラーゲーム「返校 -Detention-」の映画化作品『返校 言葉が消えた日』。以前にゲーム会社で働いた経験を持つジョン・スー監督は、もともとこのゲームの大ファンだったという。映画学校を卒業後、短編やVR作品を手掛けていたスー監督は、このゲームがあまりにも気に入りすぎて、ぜひ映画化するべきだと知人のプロデューサーたちに推薦していたところ、「それではあなたがやってみないか」と依頼され、本作で長編映画デビューを果たすことになった。
1962年、戒厳令下にある台北の高校。女子学生のファン(ワン・ジン)と、彼女を慕う男子学生のウェイ(ツォン・ジンファ)は、ある日、理由もわからないまま学校に閉じ込められてしまう。2人は、恐ろしい怪物に襲われながらどうにか学校を脱出する術を探し、なぜこのような事態になったのか、その謎を解こうとする。そうするうち、彼らが置かれた政治的状況が徐々に浮かび上がる。
物語の背景にあるのは、エドワード・ヤン監督の『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(91)の題材ともなった、1960年代の台湾で起きた「白色テロ」。国民党によって行われた政治的弾圧は、本作の高校生たちの日常にも襲いかかる。ファンとウェイが通う高校では、「共産党のスパイと思しき者を発見したら、すぐに密告するように」と言い聞かされ、校内には常に監視の目が光っていた。そうした背景を知るうち、どうやらこの事態を解く鍵は、白色テロによる密告制度と、ファンたちが参加していた秘密の読書会にあるらしいとわかってくる。
ある閉ざされた空間で、不条理に襲い掛かる死の気配から主人公が逃げ惑うという形式は、ホラー映画の定番といえる。そこに、断片的に甦る記憶を頼りに脱出方法を探るミステリーの形式が重なり合う。ファンとウェイは、恐怖の学校からどうやって逃げ出すのか、彼らが抱える秘密とはなんなのか。エンタテインメントの定型に現実の歴史と政治的背景を複雑に絡み合わせた『返校 言葉が消えた日』は、若者たちを大いに魅了し、台湾でも異例の大ヒットを記録した。
![](https://moviewalker.jp/api/resizeimage/banner/2121.jpg?w=736)
心に刺さる1本を見つけよう!「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」特集
「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」
開催日程:10月13日(金)~28日(土)
開催場所:ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場
ところざわサクラタウン ジャパンパビリオンホールB
イベントの概要・応募はこちらからご確認ください。