ホウ・シャオシェン、エドワード・ヤンだけじゃない!台湾の気鋭監督の長編デビュー作から次なる推し監督を見つける

コラム

ホウ・シャオシェン、エドワード・ヤンだけじゃない!台湾の気鋭監督の長編デビュー作から次なる推し監督を見つける

ギデンズ・コーらがサポートした俳優クー・チェンドンの監督デビュー作

【写真を見る】『あの頃、君を追いかけた』などの人気俳優クー・チェンドンが監督デビュー!(『黒の教育』)
【写真を見る】『あの頃、君を追いかけた』などの人気俳優クー・チェンドンが監督デビュー!(『黒の教育』)[c]CHARVEST 9 ROAD ENT. 協力/大阪アジアン映画祭

これから日本での劇場公開が期待されるのは、今年3月、大阪アジアン映画祭2023で“来るべき才能賞”を受賞した『黒の教育』(22)。俳優クー・チェンドンによる初監督作品で、主演はギデンズ・コー監督の『怪怪怪怪物!』(18)のケント・ツァイ。卒業式の夜、「いままでにした一番の悪事を告白しよう」という何気ない提案から始まった、3人の男子高校生の悪夢のような一夜を描いたブラックコメディ。彼らが「男同士の絆」を維持しようと、去勢を張り、無茶な振る舞いをしてはより最悪な状況へとはまり込んでいく様が、夜の街を舞台に目まぐるしく展開する。

『あの頃、君を追いかけた』でクー・チェンドンと組んだギデンズ・コー監督が製作と脚本を担当(『黒の教育』)
『あの頃、君を追いかけた』でクー・チェンドンと組んだギデンズ・コー監督が製作と脚本を担当(『黒の教育』)[c]CHARVEST 9 ROAD ENT. 協力/大阪アジアン映画祭

ベラント・チュウが『黒の教育』で第59回金馬獎最優秀助演男優賞を受賞した
ベラント・チュウが『黒の教育』で第59回金馬獎最優秀助演男優賞を受賞した[c]CHARVEST 9 ROAD ENT. 協力/大阪アジアン映画祭

コメディとはいえ、暴力描写や性描写はあまりに凄惨で、思わず目を背けたくなるほど。根底には、ホモソーシャル(男同士の絆)によって結ばれた少年たちの愚かさと有害さを冷ややかに見つめる視点がある。脚本を手掛けたギデンズ・コーや、プロデューサーのミディ・ジーなどベテラン勢によるサポートもありながら、3人の少年たちの過ごすジェットコースターのような一夜の出来事を78分という時間にぴたりと嵌め込んだ手腕は、監督クー・チェンドンの誕生を確かに示してくれる。

世代の違いを静かに見つめた、新世代監督による女性たちの家族ドラマ

『アメリカから来た少女』のロアン・フォンイー監督
『アメリカから来た少女』のロアン・フォンイー監督[c]Splash Pictures Inc., Media Asia Film Production Ltd., JVR Music International Ltd., G.H.Y. Culture & Media (Singapore).

新しい家族映画の誕生にも注目したい。幼くしてアメリカへ移住し、母の病気のため再び台湾に戻ってきた10代の少女の鬱屈した日々を描いた『アメリカから来た少女』は、アメリカで映画製作を学び本作が初長編となるロアン・フォンイー監督の半自伝的映画。SARS(重症急性呼吸器症候群)が猛威をふるい始めた2003年の台北を舞台に、母親と娘たちの揺れ動く心情を静謐な画面設計と共に捉えた本作は、第58回金馬奨で主人公ファンイー役のケイトリン・ファンが最優秀新人賞に輝くほか、多くの賞を受賞した。

演技未経験ながらオーディションで主人公に選ばれた『アメリカから来た少女』のケイトリン・ファン
演技未経験ながらオーディションで主人公に選ばれた『アメリカから来た少女』のケイトリン・ファン[c]Splash Pictures Inc., Media Asia Film Production Ltd., JVR Music International Ltd., G.H.Y. Culture & Media (Singapore).

第58回金馬奨5部門を受賞した『アメリカから来た少女』
第58回金馬奨5部門を受賞した『アメリカから来た少女』[c]Splash Pictures Inc., Media Asia Film Production Ltd., JVR Music International Ltd., G.H.Y. Culture & Media (Singapore).

ニューヨーク大学で映画を学んだシュー・チェンチェ監督の長編デビュー作『弱くて強い女たち』(20)も、世代の異なる女性たちが抱える葛藤を、音信普通だった父親の死を巡る家族ドラマとして描いた作品。監督の祖母をモデルにしたという70歳の秀英は、トラブルばかりを起こす夫に頼らず、1人で娘3人を育て、台南でレストランを成功に導いた女性。彼女が歩んだ波瀾万丈の人生と共に、娘たちそれぞれが歩んだ道のり、そして時代の変化に従い、女性たちの生き方がいかに変わってきたのかも見えてくる。


新人監督といっても、当然ながら作品の特徴は様々だ。その多様さのなかから、お気に入りの1本をぜひ見つけてほしい。

文/月永理絵


心に刺さる1本を見つけよう!「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」特集

「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」
開催日程:10月13日(金)~28日(土)
開催場所:ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場
     ところざわサクラタウン ジャパンパビリオンホールB
イベントの概要・応募はこちらからご確認ください。

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