宮沢りえが『火の鳥 エデンの花』映像化への想いを語る「火の鳥は手塚さんの信念に羽が生えたよう」
「この作品は未来を担う人と一緒に観たい」
本作は、劇場版とディズニープラスで配信中の配信版で2つのエンディングがあり、観た人それぞれが様々な受け止め方ができる作品となっている。「この作品は未来を担う人と一緒に観たいと強く感じました。私の場合は娘と一緒に観て、彼女がなにをどう感じているのかを知りたいし、繰り返されていく人間の愚かさが未来を作っていく、その繰り返される切なさのようなものを受け取って、考えてほしいと思っています。私はロミを演じたけれど、彼女の気持ちにはいまだに分からない部分もあります。演じた時とできあがった映像を観た時の印象も違っていて、確かなものがまだないんです。
ただ、ロミの決断、その生命力は本当にすごいものだと思っています。自分がロミの立場だったらとリアルには考えられないけれど、飛躍している物語をギュッと凝縮していった時に、とても日常的なものという感じがして。進化によって失われていくものと得るものがきっとこれからもたくさんあるんだろうなと思いました。進化によっても変えられない美しいものはずっと続いてほしいと私個人としては願っています」と自身が受け止めたメッセージを丁寧に説明する。
1000年後の未来は想像できないが、自分の娘がいて、その娘に子どもがいて…という近い未来までは想像がつくと話した宮沢は「生きるということを尊く感じてほしいと思うし、いろいろなものが進化したなかでも、進化によって失われていくものをちゃんと忘れないでほしいです」と母親としての思いも吐露。「作品に込められたメッセージはあまりにもありすぎて一つにまとめるのは難しいけれど、できあがった映像を観たいまの私は、人間として生まれた時に受け取った感情、人を愛するということ、慈しむこと、そして欲を重ねていくとどんなことになっていくのかを感じて、考えてほしいと思っています」。
本作では、火の鳥のビジュアルも圧倒的なインパクトを残している。「子どものころには想像のなかの生き物という漠然としたイメージだったけれど、本作で観た言葉を発さない火の鳥は、手塚さんの信念に羽が生えているように感じられて。火の鳥が舞うシーンは、普遍的なメッセージを発信し続けようとした人間として、漫画家として、アーティストとしての信念のようなものが伝わってきて、一番涙が出そうになったところです。未来に希望を見出すことを諦めないと考えることが難しくなっているように感じるいまだからこそ、この物語を作ろうと思った手塚さんが、空から私たちを見ながらメッセージを送っている、その象徴としての存在のように感じました」と、子どものころと大人になったいまで“火の鳥”という存在の受け止め方が変化したという。