宮沢りえが『火の鳥 エデンの花』映像化への想いを語る「火の鳥は手塚さんの信念に羽が生えたよう」
「スマホに触れず家族で過ごす時間も大切にしています」
そして、いまの宮沢が思い描く未来とは――。「先日、野田秀樹さんの舞台を観に行きまして、AIを題材にした舞台だったのですが、たとえば私たち役者でいえば、生身の人間として感情を揺さぶらせて言葉を発すること、体現することもAIが担うような世の中になっていくかもしれない…というお話でした。生身の良さがどんどん失われていき、精度の高いものなどに奪われていってしまうような感覚は私のなかにもあって。表現の仕事もそうですし、職人さんのような仕事もデジタルに飲み込まれていってしまうことに怖さを感じています。自分が子どもの時とは明らかに進化したいまがあります。この2、30年でこれだけ進化したということは、次の2、30年はどうなってしまうんだろう。私は、楽しみより怖さのほうが強い」と、テクノロジーの進化への不安を素直に吐露する。
続けて、「もちろん私たちの先輩がそうであったように、私たち自身も歴史になっていくのだけど、例えばいま、14歳の娘の手元にスマホを通じて世界中からあらゆる情報が飛び込んでくることに怖さを感じています。それは50歳になった私も同じで。便利だからなにかを調べようとするときには、ついスマホを見てしまう。娯楽的なものも含めて気がつくとスマホに時間を費やしてしまっている事実に『怖い』と思ってしまいます。人の欲を引っ張っていってくれるようになっている状況に怖いなって。ついさっき調べたことがすぐに広告として入ってきたりすると、『私の行動が見られている』って思ったりします(笑)」と戸惑いを明かしつつも、大切にしていることを教えてくれた。
「だからこそ、スマホに触れず家族で過ごす時間も大切にしています。まだ娘も一緒に家族旅行をしてくれる年齢なので、いまのうちにという気持ちでデジタルデトックスの瞬間を作るようにしています。なにかに頼らずに遊ぶこともやっています。堅苦しい感じではなく、アイデアを生み出すことをやってみようという感じで。アイデアを生み出す筋力が衰えていくのはやっぱり怖いです。アイデアが生まれない人になってほしくないから、この作品を一緒に観てなにを感じて、考えているのかを知りたくて。どんな反応をするのか、いまからすごく楽しみです」。
取材・文/タナカシノブ