宮沢りえが『火の鳥 エデンの花』映像化への想いを語る「火の鳥は手塚さんの信念に羽が生えたよう」

インタビュー

宮沢りえが『火の鳥 エデンの花』映像化への想いを語る「火の鳥は手塚さんの信念に羽が生えたよう」

「次の世代に残そうというメッセージが込められていると改めて感じました」

アフレコについては「自分自身から湧き出てくるものを表現するのとは違って、映像に言葉を合わせていくという作業は本当に難しかったです。声優の方たちのすごさを改めて実感する毎日でしたが、自分なりに壁にぶつかりながらも、私を(ロミ役に)選んでくださった意味はなんだろうということを考えて、挑戦を重ねていきました。アクションも結構あったので、ブースの中でいろいろと動いてみたりとか…」とスタジオでの様子を身振り手振りで再現しながら「たとえば、長い長い穴のなかに落ちていくのって、座ったり立ったりするだけではなかなかできなくて。実際に動かないと出ない声があるので、かなり肉体を動かしながらやっていました。声優の方たちはこれを声だけで上手にやられるんだろうなとか思いながら…」と苦笑いしながらも、充実感を漂わせていた。

「ロミを演じたけれど、彼女の気持ちにはいまだにわからない部分もある」という
「ロミを演じたけれど、彼女の気持ちにはいまだにわからない部分もある」という撮影/河内彩

収録は、先にアフレコをしていたジョージ役の窪塚洋介、コム役の吉田帆乃華の声を聴きながらの作業だったという。「スタジオにはマイクが1本だけ。私以外は誰もいないとても孤独な世界で、相手役の声が聴こえてくると、そのシーンでのテンションを知ることができてすごくやりやすかったです。窪塚さんとは声を通して実際にお芝居をしているような感覚になり、感情移入がしやすかった。窪塚さんのお芝居に引っ張ってもらったおかげで、ジョージという人を愛して2人きりで宇宙に行くという行動にリアリティを出すことができました。吉田さんの気負ってなくてピュアな声には自然と愛おしさが湧きました。リアルとはどういうものなのかと自分が悩んだりしていた時に、ストレートで無垢な感情がポンと弾むような音として聴こえてくると、悩みから抜け出せるようなこともあってすごく救われました」と共演者の芝居の印象を語る。


ケルポ49号惑星出身の、怪しげな宇宙のよろず屋のズダーバン
ケルポ49号惑星出身の、怪しげな宇宙のよろず屋のズダーバン[c]Beyond C.

また、イッセー尾形が演じたズダーバンから作品に込められたメッセージも強く感じたそう。「イッセーさんはとても尊敬していて大好きな方。いろいろなメッセージが込められたキャラクターにすばらしいエッセンスを加えていらして、自分も頑張らなければという気持ちになりました」とニッコリ。ズダーバンによって人間の欲や争いの始まりが描かれていくことについて、「欲というものに人間が溺れていった時に、1人ずつの争いが起き、負の連鎖を起こして大きな戦いとなり、星を滅ぼすほどのところまで辿り着いてしまう。戦争を経験した手塚さん自身の経験から、次の世代に残そうというメッセージが込められていると改めて感じました。今回改めて作品を読み返すなかで、漠然と戦争をやめるとか、環境破壊をなくすとか大きなメッセージを伝えるのではなく、生きることの尊さを子どもたちに感じ取ってもらうために大人たちはどうしたらいいのだろう、そんなメッセージが込められていると私自身は受け取りました」。

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