キアヌ・リーブスが語る、常に進化している『ジョン・ウィック』への熱い想い「与えてくれる試練は喜び」
「アクションが洗練されていく一方で、“シンプルであること”を貫いている。ストーリーが展開していくなかで、ジョン・ウィックというキャラクターについてもっと知り、新しい友情と新しい人間関係が入れ込まれていく」。
自身の新たな代表作となった「ジョン・ウィック」シリーズを「常に進化している」と語るキアヌ・リーブスは、その最新作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(公開中)について「最も大変な映画であると同時に、最も楽しい映画だった」と充実感たっぷりに振り返る。
「撮影期間は100日ほどだが、そのうち80日はアクションの撮影だった」
2014年にスタートした本シリーズは、引退した凄腕の殺し屋ジョン・ウィックが、愛する妻が遺した犬を殺されたことから壮絶な復讐へと身を投じていく様を描く。裏社会へと復帰し、ロシアンマフィアを叩きのめし、イタリアンマフィアを殲滅。そして裏社会を牛耳る“主席連合”に追われる身となる。作品を重ねるごとに興行収入は右肩上がりで、制作費と共にアクションのスケールもグレードアップ。批評家からの評価も上がり続けるという、まさに“常に進化している”稀有なアクションシリーズだ。
第4作となる『ジョン・ウィック:コンセクエンス』では、前作で自らの死を偽装して地下犯罪組織の王バワリー・キング(ローレンス・フィッシュバーン)の下で息を潜めていたジョンが再び動きだす。彼の生存を察知した主席連合は、ジョン粛清の全権をグラモン侯爵(ビル・スカルスガルド)に委ね、ジョンの旧友で盲目の武術の達人ケイン(ドニー・イェン)が強引に刺客として引き入れられる。そのころ、大阪コンチネンタルホテルの支配人であるシマヅ(真田広之)の下に身を寄せていたジョン。そこに武装部隊が現れ、壮絶な戦いの火蓋が切って落とされることに。
“ガン・フー”や“カー・フー”など、ありとあらゆるタイプのアクションを次々と繰りだすことが見どころとなっている本シリーズ。リーブスは「チャド(・スタエルスキ監督)がジョン・ウィックのアクションシーンに対して持つビジョンをそのまま実現することは、僕にとって大変であると同時に、すばらしいアクションをたくさんやらせてもらえるチャンスでもある」と、「マトリックス」シリーズで自身のスタントを務めた盟友スタエルスキ監督との厚い信頼関係をアピール。
「撮影期間は100日ほどだが、そのうち80日はアクションの撮影だった。ジョン・ウィックが与えてくれる試練は喜びでもある」と語るリーブスだが、このシリーズがスタートしてまもなく10年。2024年に60歳を迎えるリーブスには、年齢という大きな壁が立ちはだかろうとしているようだ。「人生とは死に近づくこと。以前のように走ったりジャンプしたり暴れ回ったりはできない。その事実を認めて受け入れようとしているが、ちょっと悲しくもなるよ」と吐露しながらも、「だけど、まだ車は運転できるからね」と笑みをこぼした。
「人生には選択というものがある。ジョンは自分の選択を後悔しているだろうか」
また今作では、アクション映画界のレジェンド俳優など新キャラクターが続々参戦している。ジョンの旧友であるケイン役を演じたのは、「イップ・マン」シリーズから『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)などハリウッドの大作映画にも出演する香港映画界のスター俳優ドニー・イェン。「彼はまさに伝説の男だ。チャドが彼に出てもらえたらすばらしいと思って連絡をすると、彼は脚本を気に入ってくれた」と、目を輝かせながらドニー・イェン出演の経緯を語る。
一方、大阪コンチネンタルホテルの支配人シマヅ役は、『47RONIN』(12)でリーブスと共演したこともある真田広之。「本当は前作で一緒に仕事をしたかった。けれど彼は怪我をしていて、実現できなかったんだ」と口惜しそうに振り返るリーブス。「だからこのシマヅという役をヒロユキのために作ったんだ」と告白し、「友だち同士だから味方として戦う。彼はすばらしい俳優だ。刀の動きが本当にすごい」と、日本が誇るアクションスターに熱烈な賛辞を送った。
そしてもう一人、ジョンの粛清のために動くグレモン侯爵役を演じたのは、「IT/イット」シリーズのペニーワイズ役で知られるビル・スカルスガルドだ。「彼は最高だよ。ビルの演じたキャラクターは、ジョン・ウィックに挑戦してくる。彼は優れた役者であり、その最高級の演技を間近に見られるのは喜びだった。本物のアーティストとお仕事をさせてもらえて、とてもうれしく思っています」と、リーブスは大満足の様子で共演者たちを称えた。
すでにシリーズ第5作の制作が決定しているほか、スピンオフ作品も制作されるなど拡大を続ける「ジョン・ウィック」シリーズ。そのストーリーの土台となっているものは「悲しみだ」とリーブスは語る。「彼は妻への強い愛を持っていた。それが失われたことを深く悲しんでいて、まだ彼は妻を愛している。1作目の時、新たに愛する対象を求めていた彼の目の前で愛犬が殺されてしまう。それで彼は怒り狂う。そんな部分がジョン・ウィックというキャラクターを気高くしていると思います」。
そして「彼は本来の自分を取り戻すべきだ。彼はとても暗い世界にいるからね。1作目で彼はそこから抜け出したかったし、たしかに抜け出そうとしていた。彼は自分が身を置くべき世界を知っているけれど、人生には選択というものがある。彼は自分の選択を後悔しているだろうか。もしかしたらそうかもしれないが、たまたま彼はその“仕事”に長けている。だから彼はそれを受け入れたのでしょう」と、長年共に歩んできたジョン・ウィックへの強い愛情をのぞかせていた。
※このインタビューは2023年3月に実施されたものです。
構成・文/久保田 和馬