「これは正義についての映画」監督が「イコライザー」最終章に込めた“ホラー級”暴力描写へのこだわり
ロバート・マッコールが帰ってくる可能性は…?
これまでもマッコールが19秒で敵を抹消するなど、ハードな暴力描写が話題を呼んできた本シリーズ。今作では抹消にかかる時間が9秒へと短縮され、さらに激しい暴力シーンが描かれる。それを示すように、日本公開前の映画倫理委員会(映倫)の審査では、「刺激の強い殺傷出血の描写」を理由にシリーズ初の「R15+(15歳未満の鑑賞不可)」指定を受けることとなった。
フークア監督は本作における暴力描写へのこだわりについて説明していく。「マッコールのバイオレンスが、正しい理由のために使われているのかどうか?今作ではその問いをギリギリのところまで攻めようと考えました。彼は裏切られ、孤独で、自分の居場所さえも失った状態にある。それでも彼はほかの人を助けようとするのか。感情面で彼がいまどのような境地にあるのかを伝えるために、より暴力的で荒々しいものにしなければならなかったのです」。
そして、アクション映画らしさよりもホラー映画のようなバイオレンス描写に注力した理由についても言及。「悪人というものは相手を痛めつけたり恐怖心を煽ったりすることが好きです。しかし、もし彼らが逆に恐怖心を与えられる側になったらどうなるのか。自分たちよりもヤバいモンスター、つまりロバート・マッコールに出会ったとしたら。彼の出現によって、悪人たちがどういう状況に置かれているのかを表現したかった。人々を怖がらせ、恐怖に陥れてきた彼らが恐怖にさらされる。そうした雰囲気を目指しました」。
マッコール役を演じたデンゼルとフークア監督は20年以上の盟友。初めてタッグを組んだ『トレーニング デイ』(01)で、デンゼルはアカデミー賞主演男優賞を受賞。フークア監督も一躍人気監督の仲間入りを果たす。その後『イコライザー』で13年ぶりにタッグを組み、『マグニフィセント・セブン』(16)と『イコライザー2』を経て今回で5作目のタッグとなる。
「彼は常に進化し、変化をし続けている。だからこそデンゼルには“映画スター”というありきたりな表現は相応しくはないと思います。彼は紛れもなく、真の役者だからです」。フークア監督は、俳優としての円熟期に突入してもなお新たな挑戦をつづけるデンゼルを称える。そして改めて、デンゼルとの密なコラボレーションによって成功し、自身にとっても代表作となった本シリーズとの別れを惜しむ。
「今回の作品はロバート・マッコールにお別れをするうえで、これ以上にないほどすてきなラブレターになったのではないかと思います。ですが、もしまた脚本家のリチャード・ウェンクがすばらしい脚本を携えて僕らのところに来て、『もう一本やりましょう』と言ってきたら…。いまはまだどうするか決められませんね」と、いつかロバート・マッコールが戻ってくることに含みを持たせた。
構成・文/久保田 和馬